撮り鉄さんいらっしゃい!

泊まっていたホテルのある天壇から北京駅までは、ブラブラ歩いて1時間くらいとふんで、徒歩で出かけました(帰りも歩きました)。位置関係ははっきりしているので、ジグザグで駅の方角に向かったのですが、裏側から攻める形になるので、線路がうまく越えられるだろうかと、最初から気にはなっていました。


案の定、近くまで来ると、目の前に高い城壁が立ちはだかっていたのです。公園として整備されているようで、説明板には、明代の城壁と書かれていました。急いでいるわけでもなし、せっかくだからちょっと登ってみることにしました。10元の入場料が必要でしたが、よく見ると、65歳以上の老人は半額だと書いてあったので、こういうときはさっそくパスポートを取り出して、外国人でもOKかと聞くと、分厚い綿入れの軍用コートに身を包んだ若い係員は、チラと目を通すなり、タダでいいよといってくれたのです。こんな閑散期の身も凍る日に、はるばる異国からやって来た訪問者に、敬意を表してくれたのか、はたまた憐憫の情をもよおしたのかは、彼の表情からはわかりませんでしたが、とにかく謝謝とお礼をいって階段を上りました。城壁の上部は、幅50m近くの広さがあり、建造物がぽつぽつ建っていましたが、やっぱり人っ子ひとり見当たりませんでした。



ここは北京城の東南の角にあたっていたようで、隅櫓が建っていました。そしてそのすぐ手前に説明板が立っていて、2枚目の写真のこの断面は、もともとここから城壁が北側に延びていたものを、北京駅を造る時に切断したものだそうです。唖然としました。

中国(人)というのは、どうしてこんなに大切な遺跡とか歴史の証明となるモノを、近場の利益のために簡単に破壊するのでしょう?そういったものを保存しようという気持ちが、なきに等しいです。あるとすれば、それは政治的に使えるか、あるいは観光で金になるからに過ぎず、観光資源のためなら、あっという間に見事なレプリカを作り上げ、補修のためにペンキやセメントをゴテゴテと塗りたくるのに躍起になり、あげくは、唐代建築の研究をするために、“平気で”はるばる日本まで出かけるのです。




と、他人事ながら憤懣やるかたない気分になっていたところ、目の前をガタゴト列車が通り過ぎました。そうそうここは北京駅の裏側だとあらためて思いなおし、城壁から身を乗り出して見ていると、日本のように頻繁にではありませんが、上り列車下り列車が通り過ぎてゆきます。





ここなら“撮り鉄”さんが狂喜しそうな場所ではありませんか!線路を挟んで、上方に近代建築の高層ビルが立ち並び、下方には明代らしき古建築(新築の土産物屋など)が軒を連ねる。入場料は10元(160円)、学生と年寄りは半額。もちろん撮り鉄さんでなくとも十分に楽しめます。ただしいうまでもありませんが、今の季節はおすすめしません。ちなみに、城壁を下りて、東側に回り込むと、高架になったところのすぐ前に出て、位置は低くなりますがもっと近い距離で撮影できます。