生命力

村を出たのは7月の26日でした。本来は2週間ほどで帰る予定だったのですが、こんな事態になってしまって、結局2か月間留守にしたことになります。チビなつ亡き後、ウチで私を待っている生物は、瓶の中で飼われている4匹のサソリだけになってしまったわけですが、サソリは絶食に強いので、多分何匹かは生きているとは思っていました。


さすがですね、私の生命力も相当なもんですが、2か月も食糧なしでは、確実に餓死します。サソリは全員無事でした。でも、びっくりしたのはそのことではなく、実はゴキブリも2匹入れてあったのですが、それが生きていたのです。これはサソリのエサになるかしらと思って入れたものですが、固すぎるのかぜんぜん食べなくて、むしろ仲良く共存していたものです。日本のゴキブリとは違って、もっと丸っこい体をしていて、ずっと大型です。ゴキブリではないのかも知れませんが、とりあえず私はゴキブリと呼んでいます。普段は土の中に潜っていて、時々地上に出てくるのですが、私が帰ったときには、歓迎の意味でもあったのでしょうか、2匹とも姿を現していました。しかしこのゴキブリはいったい何を食べているのでしょう?肉食なのか草食なのかもわからず、エサをあげたことはないのですが、サソリのおこぼれでももらっているのでしょうか?隠れ場所用に入れてある木片の皮でもかじっているのでしょうか?

それで、サソリのために、昨日もおとといも、ショウジョウバッタという、緑色のスマートでかなりきれいな昆虫を、かわいそうだな、ごめんよといいながら放り込んでみたのですが、ほんのちょっとかじるだけで、死骸がそのまま放置されていました。好物ではないようです。そもそもいったん死んだものを後から食べるということはないようです。


で、今朝起きて、布団を畳んでいたら、便所コオロギが飛び出してきたので、さっそく捕まえて入れてみました。そうしたら、真昼間から一気に襲撃して、気がついたらもぐもぐ食べていたのです。普段は日中は石の下などに隠れていてほとんど動かないのですが、やっぱりお腹がすいていたんですね。

しかし、これほど生命力の強いサソリも最近はめっきり減って来ました。漢方の薬剤として高く売れるので、サソリ捕りは、夏の村人たちの恰好のアルバイトとなっているからです。やっぱり人間様にかなう生命力までは持ち合わせていないようですね。もっとも種としては、4億3千万年前から存在していたそうですが。