収穫いっぱいの寺巡り

泊まったホテルは中心部に出るのに3、4キロですが、町はずれのヌイサムという200mほどの山までも3,4キロで、とにかく一直線というメインストリートに面していました。朝起きると、ホテルの前のその道路を、次から次から次へとバイクが山に向かって爆走してゆきます。ヌイサムは聖なる山といわれて寺がいくつもあるそうで、そこへみな初詣に行くのです。昨夜もバイクで行ったところです。ホテルのすぐ前が市内バスの停留所になっているのを知って、バスに乗りました。町の人たちでぎっしり満員です。


ところがしばらく走って山の麓あたりに来ると、もうものすごい人並みとバイクの列で、バスがぜんぜん動かなくなってしまったのです。あちらこちらに寺の塔が見え、ずいぶんたくさんの寺があるようです。車掌がどこまで行くのか?と(多分)聞いているのですが、さっぱり通じないので、とにかく終点まで乗るつもりでした。乗客は下りたり乗ったりで少しも減りません。終点まで行けば、みんな下りるだろうと思っていました。ところがみんなが、ここで降りろ、ここで降りろと何度も合図するのでなんだかヘンだなぁと思っていたら、英語が少しわかる兄ちゃんが近づいてきて、このバスは巡回だから、もうじきに山を下りるというのです。今乗っている人はすでに参拝を終えて帰る人たちだというのです。



それで降りようとすると、車掌が私の手を引っ張って、あそこに行けと教えてくれたのが、「福田寺」でした。ベトナムは中国に侵略されるまで文字がなかった国なので、昔使われた文字はすべて漢字です。現在のベトナム語というのは、フランス統治時代に宣教師が考案したものだそうで、発音は中国語に近く、文字はフランス語に近いんだそうですが、とても現在の普通語に似ているとは思えず、広東語とか南部の言葉でしょう。


本堂に上がるのに靴を脱ぐのはわかるとしても、ここはものすごく広い寺域で、外にも出たりするのですがずっと裸足、とにかく怪我をしそうで、場所によっては恐る恐るへっぴり腰で歩かなければなりません。


胎内巡りのコースもあって、ここは暗いし、何度も小石を踏んで血が滲みました。複雑な長い洞窟で、100体を越えるような数の観音様やら如来様やらいました。



一番高いところまで行くと景観が開け、気持ちの良い風が吹き渡ります。遠くに広がるのはカンボジアの田園です。



山門を出ると“フランスパン”を売っているというのがいかにもベトナム的。見たこともない珍しいものをあれこれ売っていて、屋台の万華鏡ですが、なにしろ移動が多い身なので、極力控えています。あたる、ということはないのですが、昔と比べてほんとうに胃腸がヤワになってきています。でも、サトウキビジュースとココナツジュースは、もうほんとうにまるまる生絞りで乾いたのどにはもうたまらな〜い!!サトウキビのちょっと渋みのする味はなつかしいです。マンゴーはまだ季節じゃないんですね、残念。


こういうものを売っている店がたくさん並んでいて、このあたりの名物なんでしょうね。魚の干したものとか、“腐らせた”ものとか、ようするにクサヤのような感じで、店に近づくだけでものすごく臭いのです。“通”の買い物ですかね。




5分ほども坂を下ると、「西安寺」というのがありました。白い象と黒い象が出迎えてくれます。





ここがまたけったいな寺で、どう見たってヒンズー教の神様みたいなのがいるし、見上げるとイスラムのモスクみたいだし、孔子像のようなのもあったし。。。何から何までごちゃごちゃになっている感じなのです。詳しいことは私も知りませんが、神佛回儒現世混交なのでしょうか?3枚目の人なんか“真珠”のネックレスしてるし、4枚目の人はメガネかけてるんですよね、本物のメガネでした。



裏にあった墓地、漢字のものもありました。




これはまた近くにあった霊廟、なぜかここだけ内部撮影禁止と出ていました。




とにかくお供えの豪華なことこの上ないです。子豚の丸焼きは、まだまだ次々と運ばれてきます。坊主がこんなもの山のように食べていいんでしょうか?米だって日本みたいにみみっちい量じゃなくて、ど〜んと20キロ入りです。


笑ったのはこれ。賽銭箱でしょうね、他に用途は考えずらいし。。。



ここからホテルまでは1時間かからないので歩きました。途中にあった寺。中国でもベトナムでも、布袋さんを祀っているところは多いですね。


この線香は何日も燃え続けるそうです。1本が数千円と高いです。布袋さんの前に並んでいる赤いろうそくは、小さいのがひとつ100円でした。寺の現金収入もかなりのものだと思われます。

しばらく行くとオープンカフェがあったのでひと休みしました。それで、奥の方にあったトイレを借りてから帰ろうとすると、なんだか古ぼけたカップや杯などが10数点埃をかぶって並んでいます。売り物なのか飾り物なのかわからなかったのですが、How Much? と聞いてみると答が返ってきました。こちらは物価が安いし、みんな稼ぎは必要なのだから私は滅多に値切ることはないのですが、ちょうどキリがよかったので、コーヒー代を含めて100,000ドン(≒500円)でどうかというとあっさり交渉成立。要はコーヒー代だけで、私は“骨董品”の杯3つと、小さな蓋物の容器をゲットしたのです。ベトナム人の篤い信仰の実態も垣間見れたし、やっぱり旅に出たら歩くのが一番。ほんとうに収穫の多い一日でした。