永厳寺

ベトナムは仏教国です。しかし、日本も遠く離れた国々の人たちからは、“仏教国”と認識されているようですが、仏教が生活の中に根を張っている度合い、というのはぜんぜん違うと思います。

今回は、ベトナム国内でたびたび長距離バスに乗ったので、窓越しとはいえ、通過する町や村の様子を間近に見ることができました。国境→ハノイはすでに日暮れが近かったし、ハノイ→ダナン→ホーチミンは飛行機でした。ですから、ホーチミン界隈から南部ということですが、とにかく仏教寺院が多いのです。それもほんとうに立派な寺院ばかりで、寂れた街並みの中に突然ニョキッ!と出現したりしました。中国でも“有名な寺”は、それは立派なモノですが、名もない町の名もない寺など、ほとんど廃寺といった風情で、無人になっているところも多いのです。そもそもお寺にお参りに行く人の姿など目にしたことはありません。(あくまで、私の住む界隈)

統一会堂に行った翌日、私はホテルのフロントで聞いた、サイゴンで一番有名な寺−永厳寺(ヴィンギエム寺)に行ってみました。日本に留学した僧が建てた寺のようです。街中でもあり、寺域そのものは特に広いものではありませんでした。本堂が広々としていて、参拝に来ているベトナム人は多かったのですが、ちょっと驚くのは、参拝客の若さです。



みな本堂の入り口、あるいはもっと前の階段の下で靴を脱ぎ、線香を持って、深々と頭をたれます。このご本尊は、どうやら本物の金でできているようです。もちろん金箔でしょうが、日本にはこんな仏像はないですよね。



中国と同じで、故人の写真というものを大切にするようです。古い写真をガラスに焼き付けたものもたくさんありましたが、日本では自宅以外で写真を飾るという習慣はないですよね。あと、お供えものというのが、とても豪華なんです。とにかく山のように積み上げてありました。花もすごかったです。お参りに来た人に聞いてみると、これは普通で、祭礼の時はお供え物で堂内が埋まるようです。これらは、仏様と僧のために捧げるのだそうです。



おかしかったのはこれ。お供えの粥に、寺の人がまわりに御札のようなものを並べたのですが、一番下側に並べてあるのは、なんとドル札(もちろん偽物)。ベトナムドンじゃないんですね。



参拝客の若さがおわかりいただけると思います。



本堂の1階のホールで説教をやっていたのですが、その様子が観音像の横にある巨大スクリーンに映されていて、びっくりしました。若い僧侶が、いかにも弁舌巧みといった感じで、何だか人気“芸能人”みたいな雰囲気もありました。


ところで、先に書いた“靴を脱ぐ”という習慣ですが、ベトナムではある意味日本以上に、“靴を脱ぐ”のです。寺の本堂で脱ぐのはよくわかりますが、私が泊まった安ホテルでも、ハウスクリーニングの女性たちは、みな靴を脱いで部屋に入って来るのです。私はもちろん履いています。ないしは、備え付けのスリッパです。彼女たちは必ず裸足になって、部屋の床を雑巾がけしてくれるのです。なんだか申し訳ないような気がして、いえいえ、脱がなくていいから、などとゼスチャーで伝えても、それは習慣なんでしょうね、素足で入ってきます。

そしてびっくりしたのが上の写真。これは公園にあった公衆トイレです。で、トイレにATMが置いてあったので、それも不思議だなぁと思ってシャッターを切ったのですが、前まで行って、もっとすごいことを知ったのです。ATMの右下に小さな靴置きの棚が置いてあるのがおわかりになると思います。そこにはゴムのサンダルが置いてあって、トイレを使う人は、ここでそれに履き替えて中に入るのです。野外の公衆トイレで靴を脱ぐ、という光景は初めて見ました。

ベトナム人と靴を脱ぐ習慣。強い影響を受けた中国文化ではないし、いったいこれは何なんでしょう?ご存知の方は教えてください。