歳紙

ゆうべ9時ころにバチバチバチッ!っと短く爆竹がなりました。人が死んだ、という意味です。音の聞こえた方角から、すぐに思い当たる家があって、外に出てみると、やはりその家で、煌々と明かりがつき、「哭」の声が闇のしじまを縫って響き渡りました。

ちょうど半年くらい前のことですが、水場の横の石段のところに腰かけていた賀さんに、「どうしたの?最近元気がないね」と声をかけたのですが、「肺ガンなんだ」とサラリと言われて、私は返す言葉もみつかりませんでした。50代後半のここの夫婦はほんとうに働き者で、耕作放棄された他の人の畑も手広く耕して、朝から晩まで、食事時間以外には家の門が開いているのを滅多に見ることもありませんでした。特にオクサンの方がチャキチャキの明るい性格で、村の人気者、その上傍目にもとても夫婦仲が良くて、ほんとうに気持ちのいいカップルでした。

私はちょうどもらいものの朝鮮ニンジンがあったので、「とにかく免疫力を付けてね」と、内心気休めに過ぎないとは思いつつも彼に届けたのが、結局彼に会った最後になりました。中国の医療費はとても高くて、手術すれば300万円ほどかかるそうで、「どうしようもないわ」とオクサンは笑っていました。

実はこの2か月の間に、40代の人の葬儀が続けてありました。2人ともガンです。すでに5,6年前から、比較的若い人がガンで亡くなる話をよく耳にするのです。大気汚染と食品添加物が原因だろうと私は思います。臨県(賀家湾村があるのは招賢鎮で、その上の行政単位。もひとつ上が呂梁市で、その上は山西省)というのは、“国家級貧困地区”に指定されているような辺鄙な地域のはずですが、天気予報欄を見ると、ここのところ大気の中度汚染マークが出ているのです。なぜならこの地域は中小規模の炭鉱が多く、そこから石炭を運び出す超大型トラックの排気ガスがものすごいからです。各家庭やビルで焚く暖房の石炭も一気に増える季節です。離石市内に炭鉱はないはずですが、陝西省へ通じる幹線道路が通じているために、時には先が見えないほどの大気汚染にさらされます。

それと食品添加物。なぜそう思うかというと、私自身が、商店で購入したお菓子の類を、ちょっと食べすぎたかなと思うくらいに食べると、必ずといっていいほど気持ちが悪くなるのです。これは私の逆流性胃炎の関係はもちろんありますが、それが悪化するずっと以前から、この問題はありました。実際政府も規制強化はしているようです。しかしこの地域では、地場の中小企業の商品が多く、価格の高い、比較的安全な有名メーカーの食品はそれほど多くはないのです(最近はかなり多くなりましたが)。同じような商品が並んでいれば、村人はやはり安い方を買います。

その上に医療費はべらぼうに高く、農民たちには“ガン治療”などという選択肢はありません。賀家湾は一見、汚染はないように思われますが、すぐ下の招賢が汚染にまみれているわけですから、計測してみればそうとうにヒドイのではないかと思います。水も、給水車がどこからか汲んでくるのですが、おそらくは水質検査など一度もしたことはないでしょう。農民たちの化学肥料の使用量は膨大だし、農薬はそれほど使いませんが、水脈とどう関係があるのかないのか。

中国の“国民病”は、現在のところ高血圧と糖尿病のようですが、いずれガンがその位置を取って替ることでしょう。私自身もすでにかなり“

あら、どうしたことでしょう?下半分が消えてしまいましたね。