クロの帰還

ほんとうにびっくりしました。


今日の昼前、扉を開けたままかたずけものをしていて、フト振り返ると、クロがいたのです。1年ほど前、突然姿を消して、おばあちゃんに聞いてもまったく要領を得ず、私がてっきり食肉として売られていったと、悲観的な早トチリをしてしまったあのクロです。実際それはあり得ることでしたが、こうやって元々の自分の家に戻って来たのです!

ところが、自分でも自由には入れてもらえない私の部屋にすんなり入り込んできたクロを、チビなつが見逃すはずはありません。彼もきかん気が強くて、自分より大きな相手にも敢然と向かってゆきます。ギャウー!ワンワン!ガヒィーッ!ブワッ!と一戦始まったのですが、なつが圧勝して、クロはかわいそうに脚を咬まれたようで、びっこ引き引き戻ってゆきました。


クロはそもそもが10歳くらいの老犬です。それがしばらく見ないうちに、ますます老いて、チビなつにもやられるほど覇気のない犬になっていました。この1年間どんな暮らしをしていたのか、とても大事にしてもらっていたとは思われないし、とにかく、焼いたサツマイモを持って、おじいちゃんの方に話を聞きに行きました。

おじいちゃんは、方山県の方で、知り合いが家を新築するのに、材料や機材が野積みになっているので、盗られないように見張り番に行っていたというのです。たしかにクロは知らない人にはとてもよく吠えるし、見てくれが怖そうなので、番犬にはもってこいです。番犬のことをこちらでは“看門狗”(看=見る)といいますが、クロは1年間、ずっとお仕事をしていたんだなぁと納得しました。それにしても老いて、やつれて、元気がありません。仕事をしても何もご褒美などもらえなかったのでしょう。あしたは来るだろうか?今日、なつに完敗したので、もう来ないかもしれない。なんだかとても哀れで、私はまたぞろ、招賢の肉屋まで、きっと骨買いに行くんだろうなぁ。。。