1キロ 12000円っ?!

ところで、忙しいわりにはここ最近ちょっと“凝っている”ことがあって、それは何かというと、サソリ捕りです。サソリは漢方薬の材料としてけっこう高値で取引されるので、日が暮れるとブラックライトを持ってウロウロしている村人は少なくありません。いくらで買ってもらえるのかは、もちろん知りませんでした。

先週のことですが、磧口で年に一度の大きな市が立ち、何人かの村人が出かけるというので、私も一緒についてゆきました。実は1か月ちょっと前に、私がいつも力仕事などを頼むシーピンが、借金して7人乗りのミニバンを購入し、“黒タク”を始めたのです。日本の白タクですが、こちらはずっとおおっぴらで、ごく一般的な市民(農民)の足です。先日チビなつめを離石の動物病院まで連れてゆけたのも、この車があったからです。それで、シーピンは欲がないというより、計算がまったくできない男で、いつも村から離石まで10元で行っているのです。招賢から離石のバスが10元なので、村からだったら20元もらわなければダメだと、いくらいってもダメです。離石までは片道40キロの上に悪路、ガソリン代が往復で50元近くかかるのに、行き返りたとえ満席でも120元です。減価償却ということがわからないのです。磧口も往復で20元×4人ということでしたが、私は以前ときどき黒タクをチャーターして、片道で80元でした。それがかなり前の相場です。私はいつも言い値の倍を払っていますが、それでも安いのです。

とにかくものすごく暑い日で、日陰で微動だにしないか、市をぶらついて熱中症に挑戦するかの選択しかない状況で、私はみなを置いてほうほうの体で先にバスで戻りました。目的は、磧口で取材した何人かの安否を尋ねることだったので、それは無事に済ませました。


ところで、一緒に行った村人の2人は、実は捕まえたサソリを売りに行くことが主目的でした。界隈では、やはり磧口まで行かないと仲買人はいないようです。それで、いったいどんな取引なのか興味があってついてゆきました。人ごみをかき分けかき分け、街はずれまで歩きましたが、この赤い椅子に座っているのが仲買人のおっさんです。後方は黄河


これ全部サソリ。これをどうするのかと聞いたら、河北省のなんとかいう町まで持ってゆくのだそうです。死んだらよくないでしょう?と聞くと、サソリは何か月でも絶食できるから死なない、死んだふりしても生き返るというのです。それで、いったいいくらで買ってくれるのかと聞くと、なんと、1斤330元、つまり1キロで(現レートだとおよそ)12000円ほどだというのです。これには私もびっくり!1キロというとかなりの量ではありますが、上述のシーピンの黒タクの減価償却等々抜きで10日分ということになります。しかもサソリが出るのは日没から2,3時間ほどで短時間労働です。深夜気温が下がって来るともう出てこないのです。この界隈はそんなに多くはないですから、夫婦で一生懸命集めて1か月くらいの労働でしょうか?黒タクよりはずっといい稼ぎです。


サソリが棲んでいるのは、土や石やレンガの割れ目、裂け目です。だから、新しく造ったコンクリートで固めたような建物にはいません。古い土ヤオトン、特にすでに人が住んでいなくて、あちこち崩れかかっているような場所がねらい目なのです。私が住んでいるヤオトンも、続きの2部屋は無住で、危険が迫りつつあるほど崩れかかっています。庭に造ってある、使われなくなった石組みのかまどにもよくいます。帰路にふと、私が普段使っている懐中電灯にブラックライトも付いていたことを思い出し、磧口から戻った翌日から、さっそくサソリ捕りを始めたのです。これがないとまず発見することが困難です。

サソリはブラックライトを当てると、見事に薄緑の蛍光色に発光します。私の小さな懐中電灯でもはっきりとわかります。それを割り箸ではさんで、ちいさなガラス瓶に入れるのですが、サソリは足裏がつるつるで、ガラスやプラスチックやホーローの壁を登って来ることはできません。だから、蓋なしで大丈夫です。ただ、箸では逃げられることも多く、プロは長いピンセットを使っています。そして、私が前住んでいて、今も鍵を預かっているイージャオの庭にはものすごくいるのです。しかも巨大なヤツが。でも半分は捕りそこねますね、割れ目に逃げ込む足はけっこう速いです。

上の写真で2日分、2軒だけです。縄張りがあるから、あまり他人の庭には行けないです。もちろん、これを売りに行くつもりはありませんが、やり出すとこれがけっこう面白いんですね。キノコ採りや山菜採りと同じで、捕るのが面白いのです。ちょっとスリリングだし。ただ、絶対に登ってこないとはいわれてますが、やっぱり寝るときは瓶の蓋をして寝ます。いまはチビなつめが部屋にいるので、何かの拍子にひっくりかえしたりしたら大騒動ですからね。