「惊蟄」な朝

今年の啓蟄は3月5日でした。暖かくなって、虫が冬ごもりから出てくるという日です。中国語では惊蟄(jing zhe)と書きますが、「惊」という字は驚くという意味です。

今朝起きてふとんを上げると、カンの上をぞろぞろと小さな虫が1匹這っていました。なんだろうと思ってよくよく見てみると、ギャーッ!サソリではありませんかっ!まだ1センチくらいのこどもでしたが、素手ではナンなので、紙を取りに振り向いて、も一度振り返ったら、ウレタンのマットの境目に逃げ込んだところでした。マットをはがして何とか捉まえてひねりつぶしましたが、さすがに中国の昆虫は季節に敏感です。

カンの上面は土でできているので、私はその上にウレタンのマットを2枚敷いています。下の「されどカレー」の写真に写っているマットです。これがなければ、とてもじゃないけど、冷たくて寝られません。その上にふとんを敷いて、その上に私が寝ているわけですから、当然その下はとても暖かい居場所です。サソリにとっては絶好の。今日見たのは1匹だけですが、いくら中国のサソリとはいえ、“ひとりっこ”ということはあり得ず、いったいサソリが一度に何匹のこどもを産むのか知りませんが、その他にも兄弟姉妹がわんさかいるはずで、やがて成長して1匹また1匹とカンの上に這出てくるのでしょう。何のことはない、私は自らの体熱でサソリの一家を養っていたようなものです。

サソリは夜中に活動しますが、マットの下から這い出て、より暖かいところを目指すので、当然ふとんの中に侵入してきます。そして、再びより暖かいところを目指して、私の身体に寄って来るわけです。あーーーー、イヤだ、イヤだ、イヤだ!ここ3年ほど咬まれたことはなかったのですが、あの痛さは思い出すだけでもゾッとします。それに、ただでさえ寝つきが悪いのに、そんなこと考えていたら、ますます眠れなくなります。

とにかく早めに一度マットを全部はがして、サソリの巣を見つけて塞がなくてはなりません。そもそもこの村のどの部屋よりも寒い私の部屋に、なんで巣作りなんかしたのでしょうか。予報では、どうやら明日から0℃を上回る天気になって、ようやく寒さから逃れられるのかと思っていたのに、一難去ってまた一難です。

話は変わって、11日が招賢の市の日で、肉屋で豚の骨を買ってきました。毎日屠殺しているのでかなりの骨が出るわけで、スープをとるために炭鉱労働者諸君が買ってゆきます。村人にはそういう食習慣がないので、残った分は、だいたいいつも冷凍してあって、1キロ100円くらいで売ってくれます。これを2キロ買って、半分はサモエド君と、もう一匹一緒にいる黒犬にプレゼントしました。


残りを持ち帰って、この間毎日、チビなつめに食べさせているのですが、ふと、ビンボーじいさんの家の犬のことを思い出して、午後に持ってゆきました。もちろん大人の犬にあげるためです。7,8匹はいるので、斧で割り砕いて、それぞれにひとつずつあげたのですが、おもしろいですね、みんなそれぞれガブッと銜えては、自分のお気に入りの場所があるのでしょうか、遠く、私の目からは届かないところに持って行って、ゆっくり味わっていたようです。もちろんこの家では、こんなごちそうをもらえることなんて、盆正月(春節清明)でもありません。


この子は盗られるんじゃないかと、ずいぶん警戒した眼差しで私を見てました。


この子はコスくて、一番最初に取りに来たのに、それを近くに置いておいて、また2つ目を取りに来ました。犬たちの行動を見ているとほんとうにおもしろくて、癒されます。たった100円の出費で、こんなにみんなが(私も)喜んでくれるなら、また買ってきましょう。


仕事に出ている、長兄のじいさんがいたので(彼とは言葉が通じる)聞いてみると、3匹のお母さんが同じ時期に産んだんだそうです。先に写っていた“オオカミ”のようなお母さんは、実は5匹産んだけどみな死産だったそうです。あんなに細い体で、母体が栄養不足で、お腹の中ですでに育たなかったのですね。産まれてから死んだのも多いみたいで、今いる8匹も何匹育つかわからないみたいです。でもその後はどうするのと聞いてみると、無事に育ったらみな招賢の町に捨てにゆくというのです。やれやれ、あの町はマジに犬の駆け込み寺ならぬ“駆け込み町”になっています。でも、町の人たちも乱暴ではあるけれど、彼らを特に排斥することもなく、なりゆきまかせで、犬と人間一緒くたになって、ぐだぐだ〜っと暮らしているようです。