廟灯会

毎年農暦の正月初六(春節から数えて6日目)が、賀家湾村の廟のお祭りですが、なぜか今年は初八、つまり2月15日に廟灯会が開催されました。この廟のお祭りは各村で行われ、それがいつなのかはバラバラで、黄砂が吹きすさぶ季節だったり、真夏の炎天下だったりします。ろうそくを持って廟にお詣りするという風習も他の村ではあまり見られないようです。



朝から女衆が総出で「油ガオ(you gao)」というキビ団子を作ります。これまでに何度もご紹介していますが、冠婚葬祭の決まりもので、キビ餅の中に黒砂糖を入れて包み、油で揚げます。これと、「湯菜(tang cai)」という黄土高原版トン汁が出ます。具は、写真の揚げ豆腐と野菜、昆布、豚肉、じゃがいもで作った春雨状のものなどですが、この湯菜の中に油ガオを5つも6つも入れて食べるのです。相当に脂っこくて私は苦手で、いつも油で揚げる前のキビ団子をつまみ食いしていますが、これはとてもおいしいです。




村の人口が普段の10倍になるというのも、あながちおおげさでないことがおわかりいただけると思います。これらにかかる費用は、当然村人たちで出し合うのですが、廟の神様を祀った受付があって、そこでお金を払い、ちょっとした記念品をもらい、線香をあげ、爆竹を鳴らして、家内安全を祈ります。そして名前と金額が書かれた紅い紙が文化広場の壁に貼られてゆくのですが、私の名前もちゃんとありますね(光って見づらいですが、真ん中)、100元出しました。しかし後になってわかったのですが、今年は晋劇を呼ばず、二人台という比較的お金のかからない劇団なので、村人が出すのはだいたい50元が相場だったようです。多すぎてもいけないのです。もちろん、村の出世頭が2000元とか、下の炭鉱が1000元とか、隣村の委員会が500元とかいうのはありますが、赤い紙は、金額によって貼る場所が異なって来るので、私は50元の列に名を連ねるのが相場だったのです。




日暮れが近づくと広場にぞろぞろと人が集まって来て、廟灯会が始まります。ろうそくを持って、楽隊を先頭に山の上にある廟までお詣りに行くのです。本来子どもが中心の行事らしいですが、当然親が付き添ってくるので、大人も子どももということになります。

しかし実は意外だったのです。あまりに人が少なくて。全体で100人ほどだったでしょうか。去年は私はいませんでしたが、ついおととしくらいはもっともっといたのです。3、400人ほどの長い列でした。ところが今年は、村には帰って来ているはずなのに、廟灯会に参加しない人が多いのです。とても寒い夜でしたが、雪が降っていたわけでも、風が強い夜でもありませんでした。それ以上に、そもそも帰村した人の数もずっと減っていました。今年はあの人の顔も見ないな、そういえばあの人も……という家が多かったのです。今の大家さんの家では、おばあちゃんが離石で入院しているので、本来帰って来る息子たちの家族が帰らない。前の大家のイージャオの家は、一家そろって離石で仕事をしているので帰らない。この2家族だけでも10人以上減ったということになります。親が村にいなければ、当然のように息子や孫たちは帰ってこないのです。人がいなければ伝統行事を支えることができない、という当たり前のことをしみじみ考えさせられました。

またまたきれいさっぱり消えました。もう書く気力がないです。