豊作貧乏

今年の夏は大干ばつでしたが、それでも後半になって雨も降り、いくらか持ち直して、なんとか自家消費分は確保できたといったところでしょうか。


棗は乾燥に強いんでしょうね、今年は豊作でした。収穫期に長雨にもあたらず、虫食いも少なくて、品質もなかなかいい棗です。去年は自家消費分すらままならないほどで、一昨年も不作でした。ところが今年は“豊作貧乏”なんですね。例年だと棗は収穫したばかりで1キロが1.5〜2元程度、つまり3〜400円くらいで出荷されます。当然のことながら、庭に広げて乾燥させてからだともっと高く売れます。


ところが今年はなんと、1キロで0.6元という買値なのです。これではもうほとんどの人が出荷をしません。棗の収穫は、「打棗」(da zao)といって、長い棒で樹の枝を叩いて落とし、それを拾い集めて選別し、袋に詰めて(主に)山の畑から下ろすのですが、出荷するくらいの量となるとけっこうな重労働です。年寄だけではできないので、だいたい町に出た息子の家族が帰って来て、一家総出で2、3日で一気にやるというパターンです。しかしこの価格では、仕事を休んでまで村に帰ってくる人はいません。それで今年は、自家消費分だけ収穫して、あとはそのまま放置されているのです。


至る所こんな感じで、農道など、場所によっては棗の絨毯を踏み潰しながら歩かなければなりません。なんとももったいない限りですが、そもそも人が減って、管理されていない樹も多く、その上に打棗しないので、とにかく全村棗の甘い匂いに包まれている今日この頃です。私はせっせと拾い集めているのですが、もう干す場所がなくて困っているところです。


なつめがいなくなってからは、滅多に山の畑に行くこともなくなりました。棗を拾う手を休めて、久しぶりにこの光景に見入りました。以前はほとんど毎日見ていた風景なのに、1年ぶりくらいです。月日の経つのはほんとうに速いものですね。