非お勧め北京の宿

最近は北京に行くことは滅多になく、通過することすらマレでした。なぜかというと、(私が使う)LCC航空は北京空港を使わないからです。ですから、ほんとうに久しぶりのことですが、一昨夜、北京に宿泊しました。これがなかなか大変だったのです。

北京駅に着いたのが午後9時過ぎ。常宿の北京YHは、部屋もドミのベッドも空きがありませんでした。翌朝に北京西駅から列車に乗って村に帰るわけだから、とにかくこの界隈で泊まろうと、客引きのおばちゃんに呼ばれるままに着いて行きました。北京駅に隣接した曲がりくねった路地に入り込んでぐるぐる廻ること数分、十数分。私もこんな裏路地に入るのは初めてだったのですが、あるわあるわあるわ。ものすごい数の安宿が密集していて、そのうちの何軒かをおばちゃんと一緒に訪ねて、まずは部屋を見せてもらい、そして料金交渉なのですが、だいたい80元から100元くらい。界隈の土地そのものが迷路になっているのですが、宿の内部がまたすさまじい大迷路で、どこに行っても畳1、2枚ほどのスペースにベッドがあるだけ、窓なしの密室という、北京版カプセルホテル。消防法など我知らず、これはいったい火事になったらどれだけの死傷者が出るのだろうと、さすがの私も足のすくむ思いでした。



ところがですね、いざお金を払う段になってパスポートを出すと、相手もギョッとして、「ウチは外国人は泊めない」と来るのです。以前なら問題なかったのですが、とにかくオリンピック以降、ほんとうに厳しくなりました。それで、おばちゃんとふたりで路地裏で途方に暮れていると、「ウチに来いよ」と寄ってきた男がいて、着いて行くと、それがなんと、北京駅の駅舎そのものの中に入ってゆくのです。見せてもらった部屋が写真の部屋で120元。足元を見られましたが、背に腹は代えられず、それに30分くらいも時間を潰したおばちゃんは、このマージンで食っているわけだからさすがに気の毒になってここに泊まることにしました。ベッドとゴミ箱とコンセントが1つだけついた、いまどき刑務所の独房でもまだマシだろうと思うのですが、なぜか、Wifiは繋がりました。

蛇足ですが、写真の左上部に柱の一部が写っていますが、これは元々の北京駅のもので、大理石でした。床のタイルも立派なものです。私のように背に腹は代えられない人々が次々とやって来るので、ボロ儲けだと思うのですが、この“利権構造”はいったいどうなっているのでしょうね?



ここは北京駅のかつての待合室をべニア板で仕切っただけの部屋ですが、宿泊というより、時間貸しの休憩室として利用されているようです。北京駅は24時間体制、しかもひっきりなしに長距離列車が発着するので、界隈の安宿もおおむね時間待ちの客が利用するのでしょう。一晩じゅう人の出入りがあり、当たり前のようにけんか騒ぎもありましたが、とにかく疲れていたのでいつのまにやら白河夜舟でした。写真中央にある「小件寄存処 住宿 超市」(手荷物預かり 宿泊 スーパー)の看板の下を入って右側の階段を上ると北京駅構内に出ます。



翌朝、北京西駅10時発の列車に乗るので、早めに宿を出て移動しました。おなじみの北京駅前風景です。マスクをしている人もちらほら。すでに数年前から、下の写真のような出稼ぎ農民工の姿はめっきり減りました。北京で仕事がなくなったからです。村の若者やおっさんたちも、今は黄河を越えて西のほうへ行く人がほとんどです。



陸橋の上から、東の空を見るとこんな感じ。午前7時17分です。何かと無頓着な私ですが、北京にだけは住みたくありません。車の数が少ないのは、土曜日だったから。



これは、先月ハルビンに行った時の北京駅のものですが、こんな警察犬はあちこちにたくさん配備されています。この日は見ませんでした。


これは、北京西駅の改札を入ってからです。3年ほど前までは何もなかったのですが、改札の内側にたくさんの商店やレストランが並ぶようになりました。もっとも、肯徳基(ケンタ)、麦当労(マック)は以前からありましたが。



コーヒーショップが一気に増えて、特にスタバの勢いは止まりません。この写真は北京駅構内。待合室の中にもごらんのようにズラリと店が並んでいます。つまり、それだけの購買力があるということでしょう。しかし、スタバのコーヒーなど、1杯が500円600円するので、私のようなビンボー人は入れません。それでなくても、私はスタバは嫌いですが。

ちなみに、陳凱歌監督「北京バイオリン」(という邦題だったと思う)の最後に、主人公が故郷へ帰ろうとする父親に向かってバイオリンを弾く感動的なシーンがありましたが、まさのその場所にスタバが開店しました。



北京西駅から無事に列車に乗りました。このZ69列車は1日1本、北京からウルムチ南駅まで3161キロを走ります。で、乗るまでの警備が特別に厳しかったのです。まず、駅の構内に入るには、切符と身分証明書の提示が必要で、荷物はすべて、空港にあるのと同じような機械を通します。液体は持ち込めますが、ときどき「少し飲んでみろ」といわれることがあります。私も一度経験しました。簡単な身体検査もあります。その後、列車ごとに分かれた待合室に入るのに、切符を見せる必要があります。中国の列車は、発車の30分ほど前に一斉に改札が行われ、自由にホームに入ることはできませんが、この時にも三度切符を見せなければなりません。で、ここまではどの列車に乗る時も同じ手筈です。荷物が多い時など面倒なことかぎりないし、第一気分的にとても不愉快です、私は。

今回は、多分ウルムチ行きだったからだと思うのですが、プラットホームに降りるときに、もう一度身体検査があったのです。爆発物検知の器具だと思うのですが、それをひとりひとり身体にあててチェックしたのです。もうほんとうにウンザリ。いつから中国はこんなに危険な国になったのでしょう。

今回は贅沢をして寝台券を取りましたが、この車両に乗っていたのはほとんどが漢族らしき人々。座席の車両もあって、これは安いので、乗っているのは、多くがウイグル族の人々。北京西駅を午前10時に出発して、故郷に着くのは、翌日の午後6時19分です。