マレーシアのぜんざい


私が偶然入り込んだ屋台街は、クアラルンプールでも有名な屋台街のひとつだったようです。市場からもう少し先に行ったところにかなり大きなモスクがあり、いわば門前街として発展していったのかもしれません。イスラム教徒とインド系住民の町で、中国系らしき人にはめったに出会いませんでした。私が最初に行ったときは、ちょうどお祈りが始まる時間だったようで、モスクの尖塔からアザーンの声が響き渡っていました。中国ではアザーンの朗誦は、すでに禁じられているので、最後に直接耳にしたのはもう30年近くも前です。余談ですが、昔はいまのように拡声器があったわけではないので、当然すべて肉声。それで、遠くまでよく通る、美しい声の持ち主を、地域の有力者が競って召し抱えたそうで、引き抜きなどもあったようです。それもむべなるかなと思われるほど、中東の町々の至る所で、朝もやを縫い、碧空を漂い、夕闇をついて日々流れるアザーンは、私のような無宗教の旅人をも、うっとりと幻想の世界に引きづりこむ強い力を持っていました。





で、モスクに向かう道の両側には、牛肉の串系のものとか、とてもいい匂いのするとびきり辛そうなものとか、どうやって食べたらいいのかわからないようなものとか、何が何だかわからないけれど、とにかくB級グルメの屋台が軒を連ねていたのです。一番上のものは、中身はごはんがメインだと思うのですが、これは食べそこねました。包んである皮はバナナです。最後はやきそば。これは日本のものとほぼ同じ味がしました。



この店は行列ができていました。中央左手に、並んでくださいと標識が出ています。ごはんの上に肉や魚や野菜をのせて、バナナの皮でおにぎりみたいに包んでありました。これはひとつ買いましたが、結果食べられませんでした。



魚もやっぱりバナナの皮にのせて焼きます。


あちこちでフレッシュジュースを売っていますが、これらはすべて天然の色のようです。白はココナッツ、ピンクはピンクグアバァ、ブルーは多分ブルーベリィ。そしてオレンジ。

写真を撮り損ねてしまったのですが、実はここで私は「ぜんざい」を見つけたのです。プラ容器に入った、緑色のどろっとしたものを売っていたのですが、店の人に聞いても要を得ず、買ってたべてみることにしました。そうしたら、それはなんと、緑豆で作ったぜんざいだったのです。翌日に行ってみたら、赤いものと黄色いものも売っていました。小豆とトウモロコシです。これらにはみなココナッツミルクが入っているので、まろやかでやや香りがついていましたが、まぎれもなく、日本のぜんざいと同じ、「マレーシアぜんざい」だったのです。その上に草餅もありました。どれもとってもおいしくて、私はこの店に3日間も通ってしまいました。