既成概念は疑わなくてはならない

ゆうべ9時ごろから、壁の向こう側でネズミが活動を開始しました。ちょうどカマド(私は使ってない)の煙が抜けるところなので、空洞になっていて、音が響くのです。ガリガリッ!バリバリッ!ゴソゴソッ!と、相当大きな音がして、その都度私は金づちでゴンゴン壁を叩きながら、帰国の準備を進めていました。


そしたら、11時半ごろドサッ!と土くれが崩れる音がして、見ると、得体の知れない黒い小動物が壁を這っていたのです。尻尾がネズミと違ってフサフサしていたし、ネズミよりも大きいのです。私は捕まえようと思って、どうやって捕まえよう、そうだ、小さなバケツがあったから、あれでカパッと蓋をしたらいいんじゃないかとバケツを取りにその場を離れたら、もうその姿は見えなくなっていたのです。たぶん、穴の中に戻ったのではないかと思います。

その後、しばらく待っていたら、またゴソゴソ穴から這い出てきて、今度はもう間違いなくネズミだったのです。じゃあ、さっきのもやっぱりネズミ?暗かったし、数秒の間だったし、突然のことで私も自信がありません。都合4回、穴から出てきたのを目撃しているのですが、後の3回は間違いなくネズミでした。


とにかく夜中の0時頃でしたが、外に出て土を削り、水で練って穴をふさぎました。明日にはセメントで固めるので、臨時措置です。ところがこんなものは簡単に食い破って、また出て来たので、私は手元にあった片歯ののこぎりをその穴に差し込んだのです。スーッと難なく奥まで入りました。これが午前1時頃だったでしょうか。

ところがまたそこから出ようとガリガリバリバリ。私がのこぎりの柄の部分をトントンと動かすと静かになって、またきっちりと20分後、ガリガリバリバリが始まるのです。私だってネズミは嫌いです。土間の上を這っているだけならまだしも、私が布団を敷くすぐななめ上に穴があるので、出てこれば、確実にカンの上を走り回ります。それに、ほんとうに大きな音なのです。ウトウトし出すと、バリバリッ!ウトウトガリガリ、ウトウトバリバリが、なんと朝まで続いたのです。この間、25Wの2本のLEDライトはつけっぱなしです。

4時半に郭公が鳴きました。5時にお隣のツバメがご出勤です。5時20分頃にスズメがちゅんちゅん。そしてさすがに睡魔に負けた私は、つい眠り込み2時間後にガバと目が覚めました。ネズミも夜行性だからこの間は活動していないだろうとたかをくくっていたのですが、なんのことはない、別のところにまた大きな穴をあけていたのです。


これはもう今日、セメントで固めましたが、穴が上下に開いているのは、こんなふうに縦に煙抜きのトンネルになっているからです。

とにかく、セメントで固めるまで、レンガを下の穴の前に積んだのですが、朝っぱらから、このレンガをグイグイ押して、外に出ようとするのです。ものすごい力で、金づちでゴンゴン叩いて音をさせても、いまやまったくひるむことがありません。レンガを少しずらして見てみると、ものすごい形相で歯を剥き出してガリガリやっています。なるほど、“齧歯類”とはよくいったものだ。このままでは、セメントの用意をしている間にも突破されることが確実になり、私はとにかく外に出て、誰か助っ人がいないか探しました。

外でだべっていた5、6人の中から、いかにも“適役”のおっさんを見つけ出し、その間にも突破されているかもしれないので、走って部屋に戻りました。



しかし、さすがですね。私の人選は間違っていませんでした。このおっさん、穴から出てきたところを、エイヤッ!と素手で捕まえたのです。なかなかの大物でした。

ネズミは夜行性である。明るいライトの下には出てこない。音に敏感なので、音をたてればとりあえずは逃げる。垂直の壁は登れない。という私の知る限りの既成概念はことごとく破られたのです。

現在夜の9時40分。いまのところ静かです。ゆうべは2時間しか寝てないし、とにかく勘弁してほしいです。明日には村を離れるので、私が留守の間に部屋中を駆け回っている可能性は高いですが、とにかく今夜は寝たいです。

ただ、ゆうべ私が最初に見た“得体の知れない小動物”は、今思うとリスではないかという気がします。中国には真黒なリスがいて、普通のシマリスより大きいです。遼寧省の撫順の公園でたくさん見たし、こないだ離石の露店でも売っていました。なぜそう思うかというと、煙抜きのトンネルは煙突になっているので、外からここに入って来る可能性は高いのです。それにリスなら壁を登ることもできると思います。ネズミはイヤだけど、リスなら飼ってみてもいいかなと思うのは、なぜなんでしょうね。尻尾が違うだけなのに。


ネットで調べてみたら、「黒色魔王松鼠」(松鼠=リス)というのがいて、ちょうどこんな感じだったんです。イエ、こんな感じだったような気がするのです。ペットとして売り買いされているみたいですね。1匹250元くらいで。確かに、離石の路上で売られているのを一度見たことがあります。賀家湾の野山で見たことはないし、誰かがペットとして買ってきたのを逃がしてしまったのでしょうか?でも、こんなのを誰かが飼っていたら、すぐに情報として伝わってきていたはずですが。。。ああでも、賀家湾とは限らない、どこか遠くの村かもしれない。とにかく不思議です。気になります。私はいま太原ですが、もしかしたら、今ごろ私の部屋の中を自由にかけめぐっているのでしょうか?食料品は、甕の中と甕の上にかたづけておいたけれど、リスなら甕の上には簡単に登れますよね。そうだ、旧式のネズミ捕りを仕掛けておいたんだけど、もしかしてそれにかかって、飢え死にするとか。あぁどうなっているのだろうか、とても心配。。。