みず菜と高血圧

先回帰国した折に、100均ショップで中国産(日本企業が中国で生産)のみず菜の種を買って帰り、4月に蒔きました。当地では緑のものが手近では手に入りずらいし、生でも煮ても炒めても食べられるみず菜は便利で、かつとてもおいしくて、私はもともと大好きな野菜です。


で、苗が大きくなって間引きをするときに、近所のひとり暮らしのじいちゃんに10数株あげました。彼は高血圧で薬が手放せないし、最近しばらく入院もしていた人です。あげるときに、当地では葉物野菜を食べることがほんとうに少ないけれど、血圧が高い人こそ、こういった緑のものをたくさん食べてね、といって彼の庭の畑に植えつけました。みず菜は成長が速いので、ぐんぐん成長して、今では化学肥料を入れていない私の畑よりもずいぶん立派に育っています。

で、じいちゃんが、少し聞き違えたのかあるいは自ら脚色したのか、「みず菜は高血圧にいいよ」といったのを「みず菜は高血圧に効くよ」と周りの人に言いふらしたのです。以来、何人もの人が頻繁にやってきて、苗が欲しいというのです。幸いみず菜は移植に強いようで、これまでに10人くらいの人にあげました。もらってもらうこと自体は、私ももちろん歓迎です。で、最初の頃は、見たことがない野菜なので欲しいのかなと思っていたのですが、違うんですね。来た人はみな自分か家族が高血圧で悩んでいたのです。

いろいろ聞いてみると、村の老人たちのほとんど8割くらいが高血圧のようです。とにかくみんな塩分を摂り過ぎるので、当然といえば当然といえる状況で、具合が悪くなると病院に行って、その後は薬漬けです。みんなものすごい量の薬を飲んでいて、保険がないから薬代も高く、聞いてみても、食事指導などはどこもしてくれないようです。薬を売って金を儲けるためなんでしょうか。


それで私は最近、親しい人には紙に書いて、もちろんネットで検索しながら、何人かに渡しました。食物繊維とかカリウムとか書いてもわからないので、具体的にホウレンソウとかさつまいもとか豆腐とか…名前を書いて、ひとり1日6g、化学調味料やソーセージの中にも塩分は多いこと、塩のかわりに酢(山西省黒酢の産地)を使うこと、唐辛子やニンニクなど香辛料は問題ないこと、などなど、おかげで私もいい勉強になりました。

で、もともと私は帰国するので、残ったものは、やはり高血圧の大家のばあちゃんにあげることになっていたのですが、おかげさまでごっそりと減ってしまったのです。


ところが3日ほど前、そのごっそりと減った貴重なみず菜の柔らかい葉っぱの上で、クロがどっかりと寝そべっていたのです!怒鳴りつけても、ここはオイラのベッドさ、ああひんやりして気持ちいい!て感じでぜんぜん動いてくれません。さすがに頭に来ましたが、こうなる原因を作ったのは私なんだから仕方ありません。


で、昨日、炎天下にあちこちから棒切れやヒマワリの茎(これが意外と丈夫で、支柱にも使えるのです)をかき集めて、柵らしきものを作りました。一見ひ弱ですが、トゲトゲのある棗の枝で作ってあるので、これで大丈夫だと思います。


クロは最近贅沢になってきて、おいしいところだけを食べてごはんを残すようになりました。でも、私がいなくなった後、誰かが定期的にごはんをあげてくれるとはとても思えません。その時になって、ようやく私のありがたみがわかるのでしょうか?

クロ!残さないで全部食べなさい!


あっ!ほらね。一瞬のスキを見て庭に入ってきます。残念ながら、クロは人を咬んだことがあるので、ここに居つかせるわけにはゆかないのです。「また咬んだらあんたの責任よ」なんてすでに言われてますから。私が帰国した直後にイージャオの家では、おばあちゃんの三周年でみな戻ってきます。そのときに離石に連れて帰るようにさんざん言っているのですが、どうも怪しいです。嗚呼、クロの運命や如何に?