紅嘴山鴉(hong zui shan ya)

ところで実をいうと、私はすでに夏河で、天葬の痕跡を見ているのです。到着した翌日、ラプラン寺の裏の方にしばらく歩いてみると、小高い丘の頂からタルチョーに飾られた長い紐が下がっていて、いったい何だろうと思って登ってみました。するとそこには人間の頭がい骨と切り刻まれた肉片がひと塊転がっていたのです。あたりには誰もいないし、やっぱり私は誘惑に負けて写真を撮りました。それでYHに帰ってから、完瑪草に見せると、そこは昔の天葬台だけれど、最近は誰も行かないので確かめてくるといって、翌日行ってくれたのですが、やっぱり天葬の痕だそうです。どういうことかというと、すでに禁止されているので、夏河ではみな火葬だけれど、遥か遠く離れたところでぽつんぽつんと暮らしている牧民たちが、自分たちで天葬にするのだというのです。ということは、葬儀という儀式を行うのに、特に専門の技術や知恵を持った者は必要がないということでしょうか?

で、私がその天葬台に上りかけたとき、何か黒い鳥が2、3羽バサバサッと飛び立ったのです。あれっ?あの鳥はウチの村でもよく見る、名前のわからないあの鳥ではないか!つまり、ここではあの鳥が天葬の担い鳥なのか?ハゲワシやコンドルではないのか?

それで、YHに帰って鳥の名前を確かめると、「紅嘴山鴉」という名前であることがようやくわかりました。何年もの間、調べようがなかったのです。

http://baike.baidu.com/link?url=2jL6HLTu-nrOMumDS87GCnbpAsq8WqVmu-ZUsplGpSYSscrobYYuvrhNM8Qad6a2o4etfY5fagENZwepWROVpq

完瑪草に聞くと、紅嘴山鴉ではほんとうの天葬ができなくて良くないそうです。つまり、ハゲワシのような大きな鳥だと肉をきれいに食べつくしてくれるけれど、小さな鳥では食べ残すのでダメなんだそうですが、いまはもう大きな鳥はいなくなったといっていました。なるほど、聞いてみないといろんなことがわからないものですね。ようやくこの鳥の名前がわかってすっきりしました。