瀋家門 その2



瀋家門には3日間いたのですが、けっきょく普陀山には行きませんでした。曇り、霧、小雨模様とクルクル変わる天気で、無理に渡っても海を眺めるどころか、山の上り下りにも難儀をしなければならず、機会を次に譲ることにしたのです。今回初めてわかったのですが、上海から寧波までは、高鉄(gao tie)と呼ばれる高速鉄道が頻発していて、2時間で行ってしまうのです(3000円ほど)。寧波から舟山までも2時間です。私が帰国するときは、これまでは北京経由だったのですが、最近はチケット購入が便利になったので(ネット銀行で決済できるようになったから)、今後は料金が安い上海を経由するつもりです。







それでもっぱら近場をブラブラして時間を潰しました。目の前が港なので、退屈することはありません。霧で漁に出ない船も多かったようですが、それでも日中は、出漁の準備に追われる漁師たちの姿があちこちで見られました。“労働”にいそしんでいる姿には、ほんとうにほれぼれする美しさがあると思います。



ホテルの少し先から、船が出る港までの1キロほどの間に、50軒ほどの「海鮮レストラン」が並んでいて、どうやらそれが瀋家門の名物となっているようです。店の造りはすべて同じになっていて、当然、何年か前までは屋台がずらりと並んでいたのでしょう、さぞかし壮観な光景だったと思います。太原で購入したガイドブックによると、瀋家門港は、中国最大の天然漁港で、最盛期には数十万の漁民が集結するそうです。


これは瀋家門とは反対側にある、普陀山行きの船が出る埠頭の建物。欠航が解除されるのを待つ人々ですが、この建物を含めて、一帯は新しい観光施設として開発され、観光案内所、土産物屋、レストラン、ホテルが軒を並べ、アメリカ資本のファストフード店まで入っていました。お客さんの顔ぶれを見ると、いわゆる“普陀山詣で”(+海鮮料理)の人たちで、南の方にはこんなにも仏教徒、ないしはそれに準ずる人々がいるのかと驚きました。同時に、ひと昔前と比べて、フツーの人々がうちそろって観光旅行に出かけるようになり、行政もまた観光産業を積極的に支援して、至る所で大開発が進行しているのです。

私が今回普陀山行きを取りやめたのは、実はこの光景に遭遇して、“のんびり海を眺めて渡海舟の幻影を見る”という勝手な思惑が早々にして破壊されたという、きわめて現代中国的な理由があったのです。