しぃあんにゃー

今日は農暦の九月廿八で、招賢に市が立つ日です。三と八が付く日に市が出ます。特に買い物もなかったのですが、天気が良かったので昼頃に出かけました。今はもう農作業はすべて終わっているので、三々五々行き交う村人に何度も出会いました。娯楽の少ない村のことですから、市に行ってあちこちひやかしたり、知り合いと雑談に興じるのは大きな楽しみのひとつなのです。


「餅子」(bing zi)といって、単に小麦粉に塩を入れて鉄板の上で焼いただけのものですが、私は朝ごはんはこれとコーヒーで済ませることが多いです。バター、いえマーガリンでもいいですが、あるといいなぁといつも思います。1日に小麦粉25キロ〜30キロくらい焼くそうです。1個1元で5日分、5個買いました。


これは銀製のブレスレットなのですが、こちらの既婚の女性は、まず間違いなく全員しています。財産なんでしょうね。母から娘に形見分けされる品物のようです。グラム売りのものですが、だいたい1つ300元くらい。私はいつか記念にひとつ購入しようと思っています。


このじいさん、きのうご紹介した、バスの中から見かけた人ですね。どこから来たのか聞いたら、紅崖という村で、歩いて1時間くらいのところです。バス道沿いにありますが、もちろんバスなんか乗らないでしょう、全部売れたって儲けは知れてますから。買ってってよ、と勧められましたが、どうも私は、あのべたつく甘さが苦手で買いませんでした。衛生面ですか?この地に8年も暮らしてりゃ、何をいまさら。。。


もうひとりバイクでやって来ました。やはり季節のものですね。


これは何だかわかりますか?入れ歯屋です。当地の人たちは、あまり歯を磨かない、どころか、生まれてこの方、一度も磨いたことなどないと豪語するじいさんなどザラで、ほんとうにボロボロ、私くらいの歳だと半分残っていれば上等です。だから、こういった屋台の入れ歯屋はけっこう繁盛しています。ここでは手前に置いてある、セラミックの歯を使っているようですが、これが、人間の本物の歯を使っている人も多いんですよね、どこから調達するのか不思議ですが。

しかし、屋台ならいい方、というか、みなさんの“びっくり度”も低いと思うのですが、私が初めて見たときほんとうにびっくりしたのは、移動入れ歯屋、つまり、カバンひとつで村々を廻っている入れ歯屋です。もちろん最初は、何を“売って”いるのかわからず、村人に聞きました。2、3ヶ月に1度廻ってくるその中年男性は、実に良く通る、少し粘り気のあるいい声の持ち主で、「しぃあんにゃー」「しぃあんにゃー」(入れ歯=鑲牙 xiang ya)と、声をかけながら村を一周します。あぁ、またあの人がやって来たなとわかるのですが、私はだいたい寝床の中にいて、こういう“物売り”の声が黄土高原に響き渡るのもいつの日までだろうかと、しみじみ思ったりもするのです。