蝉が鳴いた。

ずーーっと雨や曇り空が続いていたのですが、3日ほど前からようやく晴れました。といっても藍天が戻ったというほどではありません。

今日は、先回とは別の方角の畑に行ってみました。まず感じるのは、路に雑草が生い茂り、歩くのにも難儀するほどだったということです。去年までなら、私の前をなつめが一目散に駆け出した裏山の畑に続く道も、人の行き来が少なくなって、遠目には道筋すらわからないほどでした。ひとつには雨が多かったということであり、もうひとつは、それだけ村の人口が減ったということです。

去年までは見られなかったところにこんな陥没穴がありました。こういう穴はあちこちに散在しています。




作物はおおむね順調に育っているようでした。上から、キビ、トウモロコシ、ゴマ、アワです。

ところが、棗が実を付けないのです。付けている樹もありますが、それも平年の半分以下。実は、去年はまあまあでしたが、一昨年も付けなかったのです。この写真の畑には10本ほどありますが、全滅でした。ひとっつも付けてないのです。もしかしたら、降水量と関係があるのかもしれません。

遠くの山や谷の辺りを見渡しても、これまでよりはずっと緑が濃い感じで、やはりそれだけ雨が降ったということでしょう。今年だけでなく、去年も一昨年もよく降りました。私がこの地に来たての頃は、旱魃で立ち枯れている作物の群れを、暗然として見下ろしたことが2度ほどありましたが、なんだか、こんな短い間に気候が大きく変わってしまったような気がするのです。

ところで、きのう今日と、ウチの近くで蝉の鳴き声を聞きました。アブラゼミかそれに近い種だと思いますが、単体で、ジージーと鳴いているのを確かに耳にしました。賀家湾で聞いたのは、私の記憶では初めてのことです。もちろん帰国していた夏も多かったし、私の不注意ということもありますが、界隈に蝉はいないものだと、私はこれまでずっと思っていました。

臨県でも北部の方には樹林帯があり、以前最北部に位置する開化という村に行ったときには、たくさんいました。中部の中興社という村にもうるさいほどいました。これらの村々には、小さいながらも自然湧水が得られ、限られた地域とはいえ、樹林帯が育っていたのです。

年々降水量が増え、だんだん人が耕すことが少なくなった村々に、緑が戻り、樹木が繁り、蝉時雨が脳天に降り注ぐような夏が過ぎ、来る年も来る年も棗が実らない秋がくり返されるとしたら、唐代からあったと村人が誇らしげに語る、この“名もなき”小さな村は、やがてほんとうの自然に還ってゆくのではないか。久しぶりに耳にした蝉の鳴き声は、私をそんな暗〜い世界に引きずり込んでしまいました。(実は季節の変わり目で、またまた体調が悪いのです。。。それと、いつも一緒だったなつめがいないのは寂しいね。。。)