早飯(ザオファン)

時間が前後しますが、朝ごはんの方もご紹介しておきます。

「早飯」というのは、当日の9時から10時頃に食べます。村人にふるまわれるのは、この早飯と中午飯の2回だけです。

出るものはいつも決まっていて、「湯菜」とよばれる汁物と、「油ガオ」とよばれるキビ餅です。婚礼のときも同じものが出ます。

湯菜に入っているものは、野菜、豚肉、揚げ豆腐、粉条(じゃがいも春雨)などの他に、以下の「アー」とよばれるものが必ず入っています。





「アー」は、マッシュポテトに小麦粉と香辛料と水を入れてよく混ぜ、何段も重ねて蒸かし器で蒸かします。豚肉も香辛料入りスープでぐらぐら煮て、煮豚にしておきます。揚げ豆腐も大量に作られます。これらの作業はすべて前日に行われます。

翌朝一番の仕事が、油ガオ作り。キビ餅は時間が経つとべとべとになってしまうので、一気に作って、一気に油で揚げられ、一気に消費(冷えると固くなる)されます。マントウなどは、最近は業者から買うのが普通ですが、油ガオはそれができないのです。

午前7時。蒸し揚がったキビ餅。キビはどの家でも一定量栽培され、こういった祭事があるときに貸し借りして使われます。



キビ餅の中に黒砂糖をいれて、餃子型に包みます。これは親族も村人も男も女も、手が空いている人でいっせいに用意されてゆきます。(実は揚げる前の、生のキビ餅がとてもおいしくて、私はいつもこっそりそれを食べて、その後の仕事の腹ごしらえをします。油ガオはとても油っぽいのです)

早飯は、大きな洗面器にドカーッと入れられて地面にドーンと置かれ、自分たちで好きなだけ盛って食べます。テーブルはなしで、適当に座り込んだり、立ったままの人も多いです。いかにも前日から楽しみにしていたという風情で、日本式に“故人を悼む”といった雰囲気はまったくありません。油ガオを湯菜の上に山盛りにして、その上にお持ち帰りする人が多いので、そうとう数を準備しなければなりません。葬儀の朝は、いつもこの油ガオ作りから始まるのです。