碗禿(ワントウ)

電線張替えの大工事が終わったとき、いつも村にメーターを読みに来るおっさんが、今後停電は「不存在」であると、最高値で否定していったのに、ゆうべまた8時頃から停電しました。

PCのバッテリーが切れたら、あとはもう早寝しか手がなく、焼酎を一杯ひっかけてさっさと寝てしまったら、深夜、バリバリッ!ドッカーン!と、ものすごい雷鳴で目が覚めました。とっくになつめが枕元のカンの縁に手をあげてヒーヒー泣いています。とにかく、世界中の何より雷を恐がって、発狂しそうになるのです。もう仕方がないのでカンの上にあげてやったら、さっそく私のふとんに潜り込もうとするので、それはさせじと私も跳ね起きて、とにかく私のパーカーを着せて頭だけ出して隣に寝かせました。私は雷などぜんぜん気にならないので、すぐまたウトウトし出すと、なつめが、ピカッ!と光るたびにずるずる寄ってきて、私の枕の上に頭を乗せようとするのです。こっちも眠たいのでもうどうでもいいやと放っておくと、今度は私の鼻先に耳をぺたんとくっつけるので、こっちは息苦しくなってウッと目が覚めます。それで、ぞうきんタオルをなつめの顔にぐるぐる巻きにして、つまりなつめは全身ミイラ犬になってしまったのですが、朝までちゃんとその格好で寝ていました。それで朝になって、酒が抜けて気がついたのですが、もうなつめの臭いこと臭いこと。強烈でした。

朝起きたときはパラパラと雨が降っていたのですが、9時頃から雪に変わりました。一昨日は日中は30℃近くあって、半袖1枚でも汗が出ましたが、今朝は2、3℃くらいしかありません。春の雪どころか初夏の雪で、私の菜園でようやく発芽したトマトとレタスがどうなるのか心配です。凍死してしまわないでしょうか?

部屋でじっとしていると寒いので、招賢まで長靴を買いに行くことにしました。いつも使う近道は、滑って危険なので、車道の方を歩いていたら、「不存在」のおっさんが車で通りがかって拾ってくれました。

雑貨屋で長靴1足、25元。当地に来た最初の年に磧口で買った長靴が、たしか15、6元だったから、物価上昇率から考えると、まあそんなものかなぁと思って値切りませんでした。

ついで、今夜も停電が続くかもしれないので、碗禿(ワントウ)を買って帰ることにしました。先の10日間もほんとうによく食べました。この碗禿こそが当地の特産料理で、離石へ行っても臨県に行っても、あちこちで屋台を曳いて売っているのを見かけます。材料はひたすら蕎麦のみです。

蕎麦粉を水で溶いて、やや大ぶりの茶碗に入れて蒸す、それだけです。

5分ほど蒸した後、箸でかき回して、もう一度蓋をして25分蒸します。

できあがりです。でも、土間に直接並べないでほしい。。。あと、買うときに、ビニールの袋を口でフーッと吹かないでほしい。。。

買った人が碗に入ったまま、ヘラで切れ目を入れて、そこに好みのタレをたっぷりかけて食べます。タレは、塩、酢、トウガラシ、ニンニク、ニラ、ゴマ等々、このタレの味でお客さんを呼ぶんでしょうね。私はどうもこの味が口に合わず、いつも碗禿だけ買って帰って、自分で味付けします。1つ2元。3つ買って、細かいのが5元しかなかったので、100元札を出したら、5元にまけてくれました。

ヘラでこそげると、ペロンッと簡単に取れます。碗禿というネーミングはまさにぴったり。私はこれを細かく切って、ダシ醤油とネギと海苔、つまり日本の蕎麦のようにして食べます。汁物の火を止めてから放り込んでもいいです。日本の蕎麦のような風味は望むべくもありませんが、それでも蕎麦粉100%です。淡白系の味が好みの私は、最近はこれにはまっています。何より、火を使わなくていいので、停電向きです。

材料の蕎麦粉の入った袋を見ると、「三辺」と書いてありました。三辺は、6、7年前に一度通ったことがありますが、陝西省の北部、オルドス平原に近いところです。そんなに水のないところでも蕎麦は採れるのですね。

おじさんに1日いくつくらい作るの?と聞いたら、多い日でも50個ほどだそうです。もちろん他にも小麦粉やポテトを材料にした軽食をいろいろ売ってはいるのですが、メインはこの碗禿です。昔は招賢も1000人以上人がいたから、もっと大きな鍋でたくさん作ったものだが、今は400人ほどしか住んでないからと、ちょっと寂しそうでした。

帰りもぶらぶら。今日は砂埃がないのでありがたいです。見るからに重そうな水分たっぷりの雪でした。すぐに溶けて、やがてまた給水車に乗って村にやってくることでしょう。

串だんごもこんな感じになっていました。

けっきょく雪は夕方までショボショボ降り続きました。でも地面そのものが温かいのでほとんど積もることもなく、明日の朝にはほぼ溶けているものと思われます。予報では寒かったのは昨日今日だけで、明日からは徐々に平常に戻り、今回のお湿りも恵みの雪となって、いよいよ農耕の始まりです。