つづきとおまけ

太原に着いて、駅前に宿をとり、26日の離石(駅名は呂梁)行きの切符を買いに行きました。太原発呂梁終点の列車が1日2本あるので、これは早めに行けば、だいたい当日でも買えます。しかし朝の7時台では早いし、もう1本は着いてからのバスに間に合いません。それで中間のはないかと聞いてみると、10時発の包頭行きがあるというのです。

中国の大きな駅で切符を買うときには、窓口に客の方に向けたパソコンのモニターが設置してあって、客の注文を聞いてから、該当する切符をずらりと表示してくれます。本になって売っている時刻表というのは、しょっちゅう変わるのであてになりません。私も以前はバカ正直に時刻表を見て注文(買って)していたのですが、最近は止めました。

包頭というのは、内モンゴルの町です。どちらかというと近い方の部類に入りますが、いずれにしろ満席、大荷物、立ち席も完売の状況でしょうから、こういう列車に乗ると、いくら席はあっても、大きなスーツケースなど置く場所にも困り、トイレにも立てないというのがフツーです。何回か乗ったことがある、新彊省のウルムチ行きの列車など、向かい合って座っている座席の真ん中にまで人が立つ有様なのです。

で、よく見ると寝台が空いています。こちらでは、昼間の列車でも寝台車が付いていることが多いのです。重い荷物抱えて日本から戻ったばかりで疲れているし、ここはひとつ贅沢をしようと思って、寝台券の下段(3段ベッドで、下ほど高い)を奮発しました。ところがお値段はなんと、52.5元。2時間半、ゆっくり寝ていって700円しないのです。さすが国営、D列車G列車を除くと、中国の鉄道はほんとうに安いのです。普通車両だと14元、民営の高速バスだと80元くらいします。

さて翌日、太原駅からお決まりの安全検査を通って構内に入ろうとしたら、「ちょっと待て」と声がかかりました。やれやれまたかと立ち止まると、「スーツケースの中に刃物が入っているだろう」というのです。当たりっ!確かに私は前日に包丁を一丁購入しました。中国の包丁は、おなじみの長方形のものが一般的で、こういった形のものは、離石では手に入りません。太原の大きなスーパーでようやく見つけたのですが、列車内に持ち込めないとは考えてもみませんでした。

「え〜〜っ、ダメなの?」「きのう買ったばかりなんだけど……」とぐずぐずしていると、「別送で送らなければならない」というのです。そんな、郵便物がまともに着くかどうかもわからない村だし、そんな面倒なことしてたら列車に間に合わないし、こりゃもう廃棄しかないなぁとあきらめかけていたら、奥から上司らしいおっさんが出てきて、「どこまで行くんだ?」というので、呂梁までだと答えると、しばらく考えた後、「スーツケースから絶対に出さないように」といって放免してくれたのです。やれやれ。帰ってきて計ってみたら刃渡り20センチありました。

目の前に一目でモンゴル族とわかる老夫婦が座っていましたが、声をかけると話が長くなりそうなので(モンゴル族は一般的に日本人好き)、だまって横になったまま、楽々と呂梁に到着しました。これからはこの列車を愛用しようと思います。ただし、呂梁→太原の寝台切符は、まず購入することはできないでしょう。

呂梁の駅から、相乗りタクシーでバスが出る記念碑まで行くと、ちょうど招賢行きのバスが出発するところでグッドタイミングだったのですが、途中で事故があって1時間ほど停まり、4時頃招賢に到着しました。事故は、路面凍結でスリップして崖下に転落したようで、死者が出たみたいです。でもなんていったらいいんでしょう、「死んだ」と一言で終わり。特に知り合いでもなければ、ほんとうにあっけらかんとしていて、別に大騒ぎすることでも深刻になることでもないのです。

で、招賢からは、ちょうど村へ電信柱を運んでいたオート三輪があって、それに乗せてもらって帰りました。あの燦然と光り輝く、花の北京国際空港に降り立って4日目、無事に終点の賀家湾村にたどり着いたのです。

おまけ;

なつめは、しばらくは私の足元にへばりついて離れません(顔だけは太らないのですが、身体はデブデブ)。

この真剣な顔は、大好物の落花生がもらえるのを待っているところ。