ほんとうに困ってます!

まるで私が村に帰るのを待っていたかのように、まだ乳離れがすんでないこんな小さな犬を捨てた人がいたのです。どうやらこの村ではなさそうで、他の村から夜中にやって来てこっそり捨てたに違いありません。
当地では犬は放し飼いなので、次々と子供が生まれ、それは飼い主が責任を持って、生まれてすぐに処分しているようです。かわいそうだけれど、もうもらってくれる人はいないので、やむをえないのです。

この2匹の飼い主は、おそらくはそれがかわいそうで処分ができず、誰かが育ててくれることに望みを繋いで、我が家と目と鼻の先の空き地に捨てたのでしょう。もしかしたら、私のことを知っている人かもしれません。それほどのタイミングでした。

もうずいぶん暖かくなってはいますが、それでも日が暮れれば氷点下です。それにまだ、ゴミための固形物をあさることができるほども大きくなっていないし、いくらなんでもそのまま見捨てることは、私にはできません。せめて、自力でエサを探すことができるようになれば、それからは“ノラ”としての犬生を選んでもいいし、それもできなければ、それはそれで天命というものでしょう。

という理屈で、けっきょく私は2匹の子犬を、以前住んでいたイージャオの家の庭の竈の焚口の中に豆殻を敷き詰めて、かくまってしまったのです。「飼わないんならエサあげないでね」と、みんなから釘を刺されながらも。

それから10日間。1匹は男狗(=オス犬)だったので、なんとか飼い主を見つけることができたのですが、残された方は母狗(=メス犬)のため、もらい手が見つかりません。ひとりになって余計に寂しくなったのか、私をお母さんと思い込んで、いつも門の外でじっと待っていて、まつわりついて離れないのです。「いえいえ、エサなんてやってませんよ」なんて言ったって誰も信じず、近所の人の私に向ける視線は冷たいです。

それまではミルクだけを飲んでいましたが、きのう今日は、蒸かしたさつまいもをパクパク食べました。もう少し自力がついてきたら、こっそり下の招賢の町へ連れてゆくつもりです。あそこには食品を扱う店がたくさんあって、残飯が豊富で、飼い主がいるんだかいないんだかはっきりしない犬が五万といるからです。ほんとうはいけないけれど、谷に投げ捨てることは私にはできません。ごめんなさい。

一方、我が家のお犬様は、ゲンワンの家に行くとこんな感じで、中国の格差社会は、もはやこんなところにまで忍び寄っているのかと(???)。