春運エレジー

来年の春節は1月23日、あと1週間です。もうみなさんもテレビなどでよくご存知かと思いますが、“民族大移動”が始まります。いえ、もう始まっています。

今年は、1月8日からの40日間が「春運」といって、特別ダイヤが組まれたり、取締りが厳しくなったりします。政府の発表によると、1桁違っているのではないかっ!と思う、のべ31億5000万人以上が交通機関を使って移動するのだそうです。

そしてこの“春節切符”を手に入れることが、もうとても言葉だけでは説明できない想像を絶する困難さで、巷間「春節切符はいつから宝くじになったのか?」ともいわれているのです。私はこの最悪の時期は避けるので、中国の“老百姓”ほどではありませんが、この間の事情、光景、汗と涙と絶望は容易に想像することができます。

何でも今年からインターネットによる予約販売が始まったそうですが、その恩恵に浴することができるのは、ほんの一部の“有産階級”で、矛盾点がテンコ盛りです。

以下、2012年1月4日付『温州都市報』に投稿されたものをご紹介します(とあるサイトから拝借)。農民工たちの切なさがいくらかでも伝わりますでしょうか?

それでも、どんなことをしてでも、春節には故郷に帰る、という文化は、中国ではまだまだ健在のようです。春節に家族にお金を持って帰る、ということのみを過酷な労働の唯一の目的としている人たちが、億という単位で存在しているのです。

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 【中国鉄道部の幹部の皆様】

私は黄慶紅と言います。37歳、重慶市彭水の出身です。もう温州で10年以上も働いています。あなたがたのことはテレビでしか見たことがありません。一生、会う資格はないのでしょう。ですが、言いたいことがたくさんあります。ですから手紙を書きました。どこに出せばいいのかわからなかったので、新聞社に出すことにしました。

私は今日、切符を買いに行きました。これで4回目です。ちょっと運試ししてやろうと思ったのですが、やはり切符はありません。窓口の職員によると、ネットと電話の予約のほうが売り出しが早いので、窓口にはほとんど残っていないのだそうです。

「窓口に並ばないですむように」というのが鉄道部の初志であることは存じています。ですから、こんなことを導入したのでしょう。確かに窓口の行列は短くなりました。あなたたちのストレスも解消されたかもしれません。早めに帰宅してご飯を食べられるかもしれませんね。ですが、私たちにとっては、徹夜の行列のほうがまだ希望がありました。今は何も残されていません。ただただ怒りがこみ上げてくるだけ。「くそったれの鉄道部!」と罵ってやりたいのです。

毎年、春運での切符購入の行列は私たち出稼ぎ農民にとって苦しみでした。ですが、今年は苦しみすらも失われてしまったのです。

あなたがた(鉄道部幹部)はエアコンの効いた部屋でソファに座って、タバコをふかしてはお茶でも飲んでいるのでしょうね。こんなネット購入なんて導入して、あなたがたは私たちの生活を想像したことがあるのでしょうか?切符購入の苦しみを体験したことがあるのでしょうか?数十時間の立ち席切符さえ手に入らないのです。今、私たちには恨みの気持ちしかありません。でもそれを発散する場所すらないのです。 (了)

臨県城里の春運バス。乗員の過積載は厳禁。途中にチェックポイントがあって、とても厳しいです。ただし、これも矛盾が山積みで、罰則が厳しいので、満員になると途中で乗せてくれないのです。1日に1本、2本しかないバスでも。乗れなかった人はどうしろというのでしょう?

滅多にないことですが、賀家湾の上空を飛行機(人民解放軍機でしょう)が横切りました。思えば、村人たちのほぼすべてが、飛行機の実物を目にしたことはないのです。「行き過ぎてしばらくするとグォーンと音がするから……」と、ナンだかとても凄いことのように教えてくれました。最近は、飛行機を使って帰郷する出稼ぎ労働者も増えています。

(1月14日)