窑洞博物誌 冬至(dong zhi)

これはこの地だけの風習ではありませんが、昔ながらの風習が、今も生活の中に強く根づいている地域は、どんどん少なくなってきていると思います。

この日には町に出た子どもたちも帰ってくるのですが、村ではつい最近選挙があって帰郷しているし、春節も近づいているので、今年は静かな冬至でした。

冬至は、先祖の墓参りの日です。これが一般的な墓参りセットで、カゴの中には、みかん、りんご、棗、餃子、そして線香が入っています。普段食べている煮物や和え物を碗に入れて持って行くことも多く、特に決まりはありません。

真ん中の白い紙はお金。穴あきのコインを模したものです。右側の札束は、天国銀行発行の2万元札のたば。とっくりの中は焼酎。中央の赤いものは爆竹です。

こういった日用品とか、服、靴、家電製品から車まで、とにかく紙で作った様々なものが街では売られていますが、この村ではきわめて質素でした。死者にいろんな“物”を贈りたいという風習は、日本とはやや違うようです。

そしてなにより大切なのはお金です。日本ならば、三途の川の渡し賃六文を払ったら、あとはあの世でお金はいりませんが、中国ではお金がないとあの世でも暮らせないようです。このお金に対する価値観の差は大きいです。そして、すべてのものを燃やすことによって、あの世に送り届けるという文化もまた、日本とは異質なものだと思います。

ちなみに、日本では「線香をあげさせてください」というのが、弔問の決まり文句ですが、こちらでは「紙(つまり紙銭という意味)を燃やさせてください」という言い方をします。

タバコも供えます。

線香を供えて、お酒もかけます。普段よりもいい酒を使うそうです。

好奇心旺盛ななつめも、さすがに墓参りには興味がなさそうでした。

こんなミニ花輪もありましたが、プラのトレイといい、なんだか“今っぽい”ですね。この花輪は燃やしません。

お供えのみかんの皮が少し剥いてありますが、バナナでもリンゴでも必ず少し皮を剥いて、飴の包みもとって、すぐに食べられる状態にしてお供えするのがこちらのきまりです。箱に入ったままのお菓子を供えるということは絶対にありません。

最後に爆竹を鳴らします。こちらでは、○○家の墓ではなく、夫婦単位で墓を作るため、何ヵ所も廻らなければならず、場合によっては数キロ離れたところを数時間かけて廻るということもあります。

この日は餃子を食べます。餃子を食べると、これからもっと寒さが厳しくなっても、耳が凍ることはないからだそうです。