村役員選挙

12月12日、3年に1度の村役員の選挙がありました。第9回ということですから、25年目ということでしょうか。主任(いわゆる村長)と副主任がひとりずつ、役員が5人で、そのうち少なくともひとりは女性という、全部で7人が選ばれます。

まず前日に、賀家湾選挙委員会から公布が貼り出されました。選挙民は全部で702人、投票時間は12日の午前11時から午後2時まで、場所は村の集会所です。

当日、投票所の前で「選民証」がひとりひとりに配られます。在外投票、不在者投票はなく、互選制で立候補はありません。

村人の前で投票箱の中が空なのを確認してもらい、封がされました。投票用紙の束もみなで確認します。“物見高い”見物人が続々と集まってきて、うまくシャッターが押せませんでした。半分くらいが見たことがない顔です。

それもそのはず、村には選挙権がある18歳以上が700人もいるはずがなく、みなこの日投票するために、離石や、太原からすらも帰ってきているのです。投票所の前にはこんなにたくさんの車が並び、しかもワーゲンやトヨタなどの“外車”も少なくありません。離石からのバスが着く招賢からは、そのまま投票所まで貸切です。

12時半頃、ようやく投票が開始されました。

どうです、この人出。

人出があるところには、さっそくこうやって店開きをする“働き者の若夫婦”が必ずいます。

投票箱が「卵クッキーの空き箱」というのもここならではです。

字が書けない人のために、代書人が用意されています。

予定の2時は大幅に遅れ、午後5時頃から開票が始まり、1枚1枚名前を読み上げて、板の上にチョークで「正」の字を書き込んでゆきます。この頃にはすでに氷点下に冷え込んで、私は部屋に戻りましたが、投票者数は585人だったそうで、投票率は83%。遠くに出稼ぎに出ている人や学生、身体が不自由な人などを考慮に入れると、とても高い投票率です。

けっきょく主任、副主任に関しては、過半数を取れた人がいなかったので、翌日上位2人での決選投票ということになりました。私は村にいなかったのでくわしくはわかりませんが、12日の投票後に、結果を見ないで帰った人が多いので、翌日の決選投票は村に残った者だけで行われたようです。

2期務めたこれまでの村長(つまり今の大家さん)は、どうやら変わったようで、昨日息子(20代)に会ったら、彼らはみな離石に出て仕事を探すそうです。当選しなくてよかった、というような口ぶりでした。これでまた村から(比較的)若くて有能な人たちが去ってゆくことになります。村民の自治意識は、意外と思えるほどに高かったのですが、その治めるべき村に、何も産業がなく、新たな産業を呼び込むにはあまりに自然環境が劣悪で、インフラが整わず、わずかばかりの“人材”も次々に流出してゆく現状を目の当たりにした、わが賀家湾村の選挙風景でした。

(12月16日)