窑洞博物誌 炕(kang)

窑洞には炕(カン)と呼ばれる寝台が必ず設置されています。ただし、もともとこの地方の文化ではなく、北方の女真族の文化がその移動と共に広まったと、文献には書いてありました。

炕は、部屋の長辺に平行の向きに造るものと、部屋の奥に窓と平行の向きに造るものと2種類に分かれます。後者は採光が採れないためにとても暗いのですが、より温かいといえます。大きな窑洞の場合は、2つの炕を造ることもあります。

寝台といっても、寝るためだけのものではなく、居間の役目も果たします。大きさはどこの窑洞もだいたい同じで、私の部屋のものを測ってみたら、194×368cm、高さ65cmでした。これはやや低めの造りになっています。

造り方はというと、まずレンガを積んで炕の外枠を造り、下半分くらいは土を入れます。その上に、またレンガで煙が通る道を造り、その上に板状の石を載せます。それがこの上の写真です。

そして、石の上に薄く土を入れて平らにし、その上にゴザのようなものとか、絨毯などを敷き、普通はその上にまた布を敷いています。

この写真は樊家山で新築中の2間続きの建窑で撮ったものですが、竈の位置は寝台とは壁で仕切られた隣の部屋になっています。

手前の丸い穴に鍋をかけます。右側の大きな穴はそのまままっすぐ天井を抜けて、煙突になり、小さい方の穴が隣の部屋の炕に繋がっています。

一般的には、1間の窑洞がほとんどで、炕と竈は写真のような構造で繋がっています。

私も、建造中の炕を見たのは初めてです。こんなに厚い石の板を敷き詰めてその上に土を載せたものを、下から炊事の廃熱で、長い時間をかけて温めるわけですから(秋口から、炊事は部屋の中でやる)、私たちが普通に経験する暖房とは、感触がぜんぜん違います。窑洞の室温そのものはそれほど高くないのですが、布団に入ると、じんわりほんわりと背中から身体が温められて、とても快適なのです。“身体に優しい暖房”とでもいうのでしょうか。

ちなみに、こちらの敷布団というのは、とても薄いのです。日本のように、ふわふわで厚みがあり、その下にマットを敷くなどということは絶対にありません(炕の上に布団が置いてありますが、これで2人分)。熱を遮断してしまうからです。当地の年寄りの姿勢がいいのは、おそらくこのことと関係があると思います。