窑洞博物誌 窑洞(yao dong)

(*何度もご紹介していますが、基本のキなので、改めて)
窑洞(ヤオトン)は、大きく「土窑洞」と「建窑洞」に分かれます。地方によっては、「土窑洞」「石窑洞」、あるいは「靠崖式窑洞」「独立式窑洞」ともいうようです。

もうひとつ「沈下式窑洞」というのがあって、これはまず地面を四角形に掘り下げて、これが中庭となり、そこから四方に窑洞を掘り抜いていく形式ですが、私も実際に見たことはありません。

上の写真が「土窑」で、崖を掘りぬいた部分が部屋になっています(入り口に近い部分の屋根は露出しているものが多い)。

これは黄河の畔にある李家山村ですが、右上が「建窑」で、屋根も壁も露出しています。左下に見えるのは「土窑」。ただし、実際にはどちらとも決めがたい形式のものもあります。「土窑」も「建窑」も部屋の内部構造は同じです。

「土窑」になるか「建窑」になるかは、その地形に大きく左右されるわけで、山の中腹部に開けた村はほぼ「土窑」になり、山頂部に開けた村は「建窑」になります。また、黄河の河原沿いに開けた磧口などの平坦地の村も、ほとんどが「建窑」となります。この写真ではわかりにくいですが、黄河の対岸の陝西省は、ほぼすべて「土窑」になっています。

また、窑洞を新築する場合、「土窑」は、穴を掘りぬいてから最低でも1年は、湿気を抜くために内装工事ができないので、最近では「建窑」を造ることが多いようです。

穴だけは掘ったけれどその後状況が変わり、そのままに放置されている現場もときどき見かけます。町から帰って所帯を持つはずだった息子たちが、そのまま町の住人になってしまったというケースだと思います。

上の写真が、最も原初的な「土窑」。賀家湾から北へ40キロほどの中興社という村です。保温率は抜群によく、50℃を振り切る酷暑の夏も、氷点下20℃を超える極寒の冬も、室温にそれほど大きな変化はありません。ただし、通風、採光が悪いのが難点です。
(*以上は、あくまで私が経験的に知り得た情報なので、陝西省甘粛省など、また違う形式、区分があるのかもしれません。)