最後(?)の孫家溝

臨県に写真を焼きに来たついでに、三交から徒歩で1時間のところにある孫家溝へ本を届けに行ってきました。この村では、7人を取材していますが、その中で最も若く、頭もはっきりしている元八路軍兵士に、もう一度何か語ってもらおうというつもりもありました。ところが、その彼はすでに2ヶ月前に亡くなったそうで、またしても、本を見てもらうことはできませんでした。

日中から氷点下の冷え込みのきつい日でしたから、そうそうに引き上げましたが、ぐるりと村の中央部を一巡りして「ショウ」を探してみました。ところがここではひとつも見つけられず、老人たちがいうには、「ひとつ残らず破壊された」そうです。

ここは以前はかなり豊かな村だったようで、建物も立派で、みな大きな門をかまえています。しかし、写真でおわかりのように、明らかに元々はなにかがあっただろうという、不自然なバランスの門ばかりでした。

偶然なことに、今日が村の役員選挙の投票日だったようで、小学校の庭にはかなりの人たちが集まっていました。選挙人名簿は500人くらいだそうですが、実際にはどのくらいが住んでいるのかはわかりません。3年に1度、村長、副村長と5人の役員が選ばれます。

この“投票所”を除いては、ひっそりと静まり返った村で、あちこちに石造物の崩れ落ちた塊が積み重なって、この村ももう長くないのではないかと思わされます。私が次に来られるのはいつのことになるか?もしかしたらこれが最後になるのか?最初に取材に来たのはすでに6年前、先回来たのが3年前。老人たちの立ち居振る舞いにも、悲しいほどに衰えが目に付き、もしかしたらこれが最後かもしれないと心に刻みつつ村をあとにしました。

(12月9日)