老人相




老人相(ラオレンシャン)というのは、葬儀のときに使う“遺影”のことです。葬儀が終わってからもずっと部屋に掲げておくし、中には、生きている間も壁に飾っている人もいます。この老人相と棺は、60歳も過ぎればだいたい誰でも用意しておくもので、棺を部屋の奥に飾っている人すらいます。

私も最初の頃は、いくらなんでも遺影を取材のお礼に渡すのも気が引けて、わざわざ正面切りは避けて、スナップ的なものを大きく引き伸ばしてあげていました。そのうちにわかったことは、彼らはそんなスナップではなく、バックを塗りつぶした“遺影”が欲しいのであって、それを準備しておかないと落ち着かないらしいのです。しかしこの写真はやはり高いし、何より、写真館まで行かなければなりません。ですから2年ほど前からは、この老人相を撮ってお礼のかわりにしています。それと、タバコが1個か2個。タバコを吸わない人もいますが、「接待別人」といって、誰か来たときにふるまってください、といえば、喜んでもらってくれます。




で、この遺影は、取材をした人と、何か特に世話になった人に限定していたのですが、最近とあるところから、それ用にカンパが入ったので、4、5日かけて、賀家湾村の老人たちの写真を撮り、今、臨県に焼きにきたところです。

私がいつも焼いてもらう所は、いわば業者専門の写真館で、つまり、招賢クラスの小さな町にある、焼く設備を持たない小さな写真館の人が焼きに来る所です。ここの女主人が私の活動を知っていて、業者価格にしてくれるのです。




それで今日午後部屋に入ると、7、8人のいかにもそれらしき男たちが、パソコンの前にたむろしているので何かしらと覗いてみると、何と、私の写真の処理中(午前中に出している)だったのです。それで私の顔を見るなり、口々に「このカメラはいったいいくらするんだ?」。カメラだけは、ほんとうに胸張って made in japan と声に出していえますね。このカメラがなかったら、私のこの間の活動もあり得なかったと思います。

(11月15日)