吉林の秋田小町

先週日本から友人がやって来たので、太原まで迎えに行きました。大きなスーツケースを携えて。とにかく、こちらでは手に入らない食糧品を買い込むためです。

友人が空港に到着する前に超市(スーパー)へ行き、まずはわき目も振らずに穀物売り場に直行、米が買いたかったのです。日本と行き来するときはそんな重いものは買えないのですが、今回は空身です。

招賢の町でも米は買えます。村人も週に1度くらいは食べているようですが、この米がとてつもなくマズいのです。私はもちろん1番高い、10キロで40元くらいする「東北米」を買っているのですが、日本ではどこを探したってこんなマズい米は売っていません。菓子業界どころか、工業用糊の工場へでも行くのではないかと思うくらい、とにかくマズいのです。炊きたては何とかなるのですが、いったん冷えたらぱらぱらぼそぼそで、おにぎりなんてとんでもない。チャーハンにしたって、およそ米の味などどこをどう探したってしないのです。村人も米はマズいから食べないといいますが、そりゃそうでしょう、打ちたての麺と比べたら月とすっぽんです。

で、売り場でつぶさに観察してみると、「金龍魚」というメーカーの米が3種類並んでいました。ここはもともと食用油のメーカーだったのですが、この2、3年前から穀物も扱うようになりました。油でも米でも、他のブランドと比べて一段値が張る商品です。そのうちの2種類は離石でも買うことができ、何回か買ったことがあります。まぁまぁの味ですが、まだまだ日本の米とは比べ物になりません。離石では見たことがないもう1種類の「雪粳稲」という米が一番高くて、10キロで94.5元、いつも買う米の倍以上の値段ですが、もちろん迷うことなくこれを購入しました。

このときは急いでいたので気がつかなかったのですが、家に帰ってよく見てみると、なんと、「原糧品ジョン 秋田小町」と書いてあるではありませんか!元々の品種があきたこまち、という意味です。産地は吉林省の梅河という所で、秋田と緯度も近く、気候も似ていると書いてありました。

あぁ、黄土高原の村に暮らして6年、ようやくにして、冷えても食べられる、おにぎりにもできる、咬むとねばりけを感じる、チャーハンにしても味がある米に出会うことができました。長かったです、ほんとうに。それでこの数日はほとんど“感涙に咽び”ながら米を食べているのです。おまけに、友人がさんまの蒲焼や野沢菜ふりかけやホテルマガリンや、名古屋人の私のために青柳ういろうまで持ってきてくれて、日本の食べ物って、ほんとうになんておいしいんでしょう!

追記:なつめにはいつも米をあげていたのですが、けっこう量を食べるので、これでは秋田小町がじきになくなってしまいます。かといって別に炊くのもめんどうだし、きのうも今日も、町で売っている餅を食べさせました。もともとなつめは米があまり好きではないので、今後は麺食犬に育てようと思っています。

(11月8日)