“エコな暮らし指導員”

去年の秋からまとまった雨は降ってないし、12月初めから共同水道は凍結して使えないままだし、村はいまどこも水に困っています。それで、村の仕事として、給水車がときどき廻ってきます。村長さんの家に鉄製のタンクがあって、それをオート三輪に乗せて、今日は村長の息子さんが運転していました。谷の井戸まで行って汲み上げて、ピストン輸送で7、8回来ましたが、例によって“我先に”状況です。

ご近所同士のことだからまぁ穏やかなものですが、それでも早くもらって、2度3度と汲みに来たいのでおばちゃんたちは必死です。私はひとり暮らしだし、いないことも多いので、つい遠慮してぼーっとしてると、「何やってんの!かしなさいっ!」とバケツを取り上げて、「ほら、日本人のバケツだから」とかなんとかいうと、ありがたいことに、だいたい優先して入れてくれます。

今日は前の大家さんが、なんと4杯も余分にゲットして持ってきてくれました。私も6杯ゲットしたので、おかげさまで大中小ある3つの水がめが満タンになりました。この水はほぼ透明な水で、甕の中で2、3日もすればきれいになり、これで1ヶ月は十分もちます。

私が使う水は、1日に小さめのバケツ1杯ですが、もちろん他の村人と比べて圧倒的に多い量です。私は1日おきくらいに炊く米を研ぐ水がけっこういりますが、彼らが食べる粟は洗いません。麺をこねる水もそれほどの量ではないし、第一彼らは毎日顔を洗ったりしません。

私は米を研いだ水で食器を洗い、その水で野菜の下洗いをし、その水で鍋やフライパンを洗い、最期には庭の小さな畑に撒きます。市に行ってほうれん草などを見ると、「あぁおひたしにしたいなぁ」と思うのですが、これには大量の水を必要とするので、いつもがまんしています。顔を洗った水は洗剤が残るので、ほとんど土間に撒きます(乾燥がひどいので)。洗濯というのは、冬場は小物以外、ほとんどしたことがないです。なつめもずっと洗ってないのですが、しょっちゅうブラシをかけてやるので、意外に臭くはないです。ですから、いわゆる“下水に流す”のは、1日に洗面器半分もないという、超エコ暮らしをしているのです。

日本にいる人から見れば、信じがたい、とても自分にはできない暮らし、だと思われるでしょうが、慣れてしまえばそれほどでもありません。私も最初に来た頃には、村人たちの爪の先が真っ黒だったのがとても気になりましたが、今は私もそういう指先をしています。だからどうってことないです、私は。

これらは水に関してですが、電気だって基本的な“哲学”は変わらないはずです。これからは、日本でもほんとうの意味での“エコな暮らし”が、個人にも企業にも要求されると思いますが、私も帰国したら、“エコ指導員”として、新たな生きがいが見出せるのではないでしょうか。

(3月31日)