水が洩れた。

今回日本から戻ってショックだったことのひとつに、庭の井戸の問題がありました。
この村では、庭に井戸を掘っている家が比較的多く、ウチにもあります。井戸の構造は詳しくはわからないのですが、人間ひとりが入れるくらいの穴をまっすぐに10mほど掘り下げ、底は大きな甕型に掘ってコンクリートで固めてあるようです。少し離れたところに取水口を開けて、そこから斜めに穴を掘って、直接雨水を取り込む構造です。ということは、コンクリートが普及してきてからですから、そんなに長い歴史があるものではありません。

それでも、大家さんの子どもの頃にはすでにあったそうですから、40年50年は経っているはずです。ですから、老朽化して底にヒビが入り、そこから水がすこしずつ洩ってしまうわけです。それでも去年の冬はけっこうもちました。やはり1カ月ほど帰国していたのですが、帰ってきて春まで、なんとかぎりぎりまに合ったのです。また、去年の秋は特別に雨が降ったし、共同水道もひけたので、井戸水は温存して、しっかり貯め込んでおきました。

ところが今日、去年の秋以来初めて水汲みをしたのですが、なんと、日本に帰る前は確かに水面がなみなみと広がっていたのに、なんだか、ほんのお情け程度の水面しか見えないのです。バケツを下してみたら底の泥を拾って、濁り水が出てきてしまいました。ヒビ割れが進んだのです。あ〜あ、庭もいつもきれいきれいにし、取水口の蓋になつめが乗らないようにたびたび怒り、一度も使わずに大事に大事に貯め込んだ水だったのに。

それでも少しはあるので、バケツに8杯くらい汲みあげました。なるべく底にたまった泥を拾わないようにじょうずに汲むにはコツがいるのです。泥は甕にいれておけばじきに沈殿します。早く暖かくなって共同水道が出るようになるといいのですが、これも無限にあるわけではないし、春先は農作業にも水を必要とするので、きっとあっという間に断水になることでしょう。年中自由に水が使える暮らしというのは、黄土高原では永久にかなえられない夢だと思います。

そして、水とくれば火ですが、くだんの“優しいおじさん”、これがそんなに甘い話じゃなかったのです。たしかに200元分、たぶん250kgを運んでくれ、おまけに点火用の木切れまで持ってきてくれて、感謝感謝と何度も頭を下げたのですが、これがもう、劣悪きわまりない石炭だったのです。まだ完全に炭化していないのでものすごく固く、金づちでたたいてもぜんぜん割れません。金づちの柄の方が割れてしまいました。一番困るのは、なかなか火が付かないことです。そもそも私は村人のようにほんの少しのマキでじょうずに火を付けることができません。そして苦心惨憺してようやく火を付けても、火力が弱く、鍋の水がなかなか沸騰してこないのです。翌朝、下にたまった灰を見ると、もうまっ白になった石ころがいっぱい。あぁ、早く暖かくなってほしいなぁ。

(2月14日)
*ああ今日は、バレンタインですね。最近は中国でも流行ってきていますよ。離石あたりでもチラホラ商店のセールがあるみたいです。「情人節」といいます。男性が女性にバラの花を贈るようです。上の写真はぜんぜん関係なく、墓です。