良くないことって、連鎖しますよね。

まず、この夏はまったく雨が降らす、旱魃状態でした。ところが、私が1ヵ月村を空けて戻った翌日、その間一滴も降らなかった雨が降りました。しかもかなりの量。しかし、遅きに失したとはいえ、それでもそれなりにと喜んだのもつかの間、その後は降ったり止んだり曇ったりで、カラリと晴れた日が少なく、今度は日照不足気味になってしまったのです。

雨が降ったおかげで、粟の穂も出ました。トウモロコシも実をつけました。ジャガイモやサツマイモの葉の緑も戻ってきました。綿も花を開きました。しかしながらそれもこれもすべて小ぶり、貧弱、寸詰まりで、普段なら2メートルをはるかに越えるその名も高粱の背丈すら、私の身長にも届かないありさまです。村人たちがもっとも丹精込めているといえるトマトはさっぱりで、まったく実をつけていないのも見かけます。このトマトでピューレを作って、麺にかけて食べるのが、彼らの一般的なトマト料理法です。これは、瓶詰めにして1年中保存できます。

で、この痩せたトウモロコシをよくもらうのですが、これがもうとてつもなくマズイのです。もともと飼料用に栽培しているもので、採りたてはたま〜においしいのに当たりますが、まずはほとんど味がなく固くてたくさん食べると必ずおなかを壊します。

それでも、せっかくばあちゃんたちが何か、とても大切なもののように抱えて持って来てくれるので、すぐに皮をむいて茹でるのですが、やっぱり固くて味がない。しかもここ数日前から、私は奥歯がやんで、鎮痛剤なしではいられないので、とても食べられる状態ではなく、仕方なくなつめにあげるのですが、これが食べない。

それほどにまずいということもあるのですが、それ以上に、ここのところなつめに贅沢をさせていたので、すっかり味を覚えてしまって、ドッグフードを出しても、ちょっと臭いをかいで、フンッ!と横むいて、ガンとして食べないのです。お腹がすけば食べるだろうと、放っておくと、まる1日でも断食します。もちろん、大好きな牛乳やソーセージやお菓子はペロリです。それとて日本の犬なら普通の食事でしょうが、とにかく、贅沢させると、私がいないとき、人に預けるのにほんとうに苦労するのです。

で、そのなつめと共に、対ネズミ戦争は継続中なのです。5匹目のネズミがぺったんこに繋ったのは8月9日でした。そして、13日夜に6匹目が繋ったのですが(こんなどうでもいいことに限って、メモがとってある)、翌朝始末をしようと寝てしまったら、まんまと逃走されてしまったのです。で、このネズミがよっぽど学習能力に長けているらしく、以降さっぱりぺったんこの上を通らなくなりました。

それでも、10日ほど前、なつめがネズミをカマドの焚口の中に追い込んだので、そこを壁にかけてあった鏡で塞ぎました。これでもうあとは静かに餓死してくれるのを待つだけとなったのですが、なんだか、気が塞いでいる時というのは連想が暗くなって、『アルジェの戦い』やら『地下水道』やらのシーンを思い出したり、まして、274人が殺されたというこの村の壕をイメージしたりで、いやーな気分に陥っていたのですが、このネズミがいったいぜんたい何を食べて生きているのか、夜電気を消すと、待ってましたとばかりガサゴソ、キキッ!とやりだして、音には超敏感な私はそのたびに目を覚ましてしまい、先の奥歯が痛むというのも、この睡眠不足が一因なのです。

もうひとつ痛むところがあって、両膝の内側の青あざがどんどん広がって、こすれると痛いのです。村から招賢の町に下りる途中にいつも水がたまる場所があって、そこがちょうど半乾きのコテコテのぬかるみになっていて、タイヤをとられて転倒しました。そのときは何でもなかったのですが、やっぱり年をとると身体反応にも時間がかかるようです。

それで、ゆうべは鎮痛剤と安眠剤を一緒に飲んだらよく眠れたのですが、今朝目が覚めたら、夕べのうちに天井の壁の一部が崩落しているのに気づきました。このひび割れはこの部屋に来たときからずっと気になっていたのですが、大家さんは「もう何年も前からこんなだから大丈夫」と問題にもしなかったのですが、やっぱり落ちました。幸い、カンの上ではないので寝ている間に直撃ということはないのですが、残りの部分が崩落するのは時間の問題でしょう。いったん崩落すると、そのまわりからポロポロ不断に崩落するようになります。なにしろ清朝の生き残りですから、そろそろ寿命かもしれません。隣にあるもう一部屋は、もうすでに危険で住めない状態なのです。日本軍の銃弾痕が残るヤオトンの、最後の住人が日本人というのも、不思議な縁ではありませんか。

そしてまた、ネズミがどこかに穴を掘ったのでしょう、再度逃走したのです。前回から数えて2週間目です。奥のゴミ置き場に潜んで、またまた夜中になると騒ぎ出すのでしょう。あちこち地下道を掘っているはずなので、そのうちどこぞの穀物倉庫でたっぷりと栄養を蓄えて、復讐にやってくるのではないか?あぁまた果てしなき戦いが始まると頭が痛いです。

もちろん、私にとって最大の良くないこととは、ネットが繋がらないことです。どうやら、この間に無線ネットの方式が変わったようで、新しいデバイスが日本のPCにインストールできないようなのです。複数の専門家(らしき人)にやってもらったのですが、ダメでした。旧式のデバイスはもう手に入りません。招賢の町まで下りればネット屋はあるのですが、これが行けば必ず開いているわけではなく、ようやく席を確保すると、子どもたちが周りを取り囲んでうるさいので、とても仕事になりません。

ところが、私は今、一年中で最もネットを必要としている時期なのです。というのは、来月にウチの学校から生徒たちが、東北地方に研修旅行にやって来るので、現在学校側とハルビンの旅行社との間で、あれこれ連絡事項が多く、やむなく、国際電話と長距離電話を使いまくって、電話代がかかることおびただしいのです。

もうもう、限りなく、良くないことが連鎖しています。いつまで書いていても終わることがないのでもう止めますが、ただひとつの希望は、ようやく気を取り直してここまでご報告することができるようになったということでしょうか。

(8月29日)