狼が出た!

狼が出た!というのはほんとうでした。しかも私がよく知っている若い夫婦者の家畜が被害にあったのです。羊が8頭と豚が2頭。羊だってけっこう大きな動物ですが、豚というのは、近くで見ると巨大で、皮膚だって固そうだし、力だってありそうです。それが一気にやられたとすると、相当の数の群れだったのではないでしょうか。

しかも、彼らの家畜小屋というのは、ここから招賢に下りる道沿いにあって、谷筋とはいっても、人気の多いところです。すぐ近くに小さなレンガ工場もあるし、ひんぱんにバイクや車が行き来しているのに、なぜそんなところに狼が出没したのか、まったく信じられません。と同時に恐ろしいです。

私の住んでいるヤオトンは、(人が住んでいるなかでは)村の一番はずれにあって、ほんの4、5分も山の方に歩けば、写真のような風景が広がるところです。ほとんど畑になっているのですが、当然山と山が連なるあたりは谷になっていて、浅い谷は耕してありますが、地形によってはものすごく深い谷になり、そこに狼が住んでいてもおかしくありません。

しかも、ウチの庭の土塀は崩れていて、簡単にまたいで入れるようになっていたのです。それで、オス犬が来てはおしっこをしていくので、草棗というトゲトゲの植物でバリケードが作ってあるのですが、それでもいったいどこから入ってくるのか、ほとんど毎晩のようにやって来る(なつめが騒ぐのですぐにわかる)ので、頭を悩ませていたところでした。

もう暗くなったら、心配で庭にも出せません。私は樊家山にいたとき、飼っていたうさぎが猫に襲われて死んだという哀しい経験を持っているので、とにかくバリケードをなんとか補強しなければなりません。さてどうやってと、いろいろ考えていたら、てっきり奥で寝ていると思っていたなつめが、庭でワンワン吠えているので、あわてて部屋に入れました。もう1時をまわっている時間です。

昼間会った子どもを抱いた若いお母さんはほんとうに恐がっていました。羊を飼っている村人はたくさんいるので、みな頭を悩ませていることでしょう。羊小屋などみな露天で、建物の中に入れているわけではないから、防ぎようがありません。村人たちの大切な財産をどうやって守るのか、人と狼との熾烈な闘いが続くのでしょうか。

いったいいつの時代のどこの国の話かと耳を疑ってしまいますが、これもおおもとをさぐれば、環境破壊、気候変動、食物連鎖‥‥と、きわめて身近な現代的な問題に行き着くのかもしれません。

今日のなつめ;
これは寝てるのではなくて、すねているのです。とにかく1日中でも外に出たくて出たくてしかたがなくて、しかも私が一緒でないとダメ。忙しくて放っておくと、すぐにすねるか穴を掘ります。

(4月2日)