今日も、ビックリ仰天しました。

今日の夕方、以前いた家の大家さんと話していたら、「狼が出るから気をつけて。犬は部屋の中で寝かせた方がいいよ」というのです。

「えっ!狼‥‥?マサカ‥‥」。いくら人口密度が低いとはいえ、谷から山のてっぺんまで耕し尽くしてあるし、当然人間が行き来しているはずです。森林があるわけでも、そもそも水すら枯渇している土地だというのに、狼なんて、いまさらレッドデータブックから抜け出てくることがあるんですか?

ただ、確かに昔、少なくとも日本軍がこの地にやって来た頃には、狼はたくさんいたようです。私が聞き取った老人たちの中にも、「洞窟に隠れていると、入り口の前を狼がウロウロしていて恐かった」とか、「逃げる途中で狼に会ったので、着ていた服を投げ与えて逃げた」という話をする人がけっこういるのです。賀家湾の壕が焼かれたときには、子どもの死体を谷に投げたので(子どもの遺体は埋葬しないのがこちらの風習)、急に狼が増えて、日が暮れると村人は外に出なかったという話も聞きました。

しかしそれはすでに70年くらい前の話です。今の時代に狼なんて‥‥。犬は全部放し飼いだから、どんどん増えて、きっと谷に捨てられた野犬の群れでしょう。と、私が高をくくると、大家さんは、「とんでもない。留隣庄では20頭の羊がやられたんだ!」というのです。そして賀家湾でも、つい最近、谷の方で7頭の羊と、2頭の豚がやられ、犬も何匹か殺されたというのです。

今日は4月1日だけれど、まさか大家さんがそんな西洋のお祭りがあることなど知る由もなく、どうやらほんとうの話のようです。去年までは見なかったけれど、今年急に出てきたそうです。この冬は気候も異常で、ものすごく雪が降ったし、最近の黄砂も近年にない猛々しさです。これまでは、どこか人里はなれた深い谷に潜んでいた狼が、食べ物を求めて村落に近づいてきたということでしょうか?

“恐いもの知らず”の私も、さすがにこの話は恐いです。私は葬儀の取材のときなど、深夜や夜明け前にひとりで山道を移動することがあるし、なつめを連れて真夜中の散歩に出かけることもしばしばですが、もう止めます!

過酷な黄土高原暮らしにもいいかげん慣れてきたけれど、黄砂、停電、水涸れの次に狼がやって来るとは、ほんとうにビックリ仰天しました。

狼の写真はありませんが、こうやって羊の毛をすきとって売ります。羊は気持ちがいいのかと思いきや、メェ〜メェ〜と嫌がってました。

(4月1日)