ビックリ仰天しました。

いろいろありましたが、ようやく平常生活に戻りました。こちらも三寒四温の日々ですが、氷点下というのはなくなり、ストーブも夜にちょっとひと焚きするだけです。19日夜の黄砂は、こちらでも滅多にない大嵐だったようで、なんでも2億7千万人が影響を受けたとか。ヤオトンはもちろんビクともしませんが、入り口に貼ってある紙が破れるのではないかとヒヤヒヤし通しでした。あれが破れたらえらいことになったのですが、2重にも3重にも貼ってあるので大丈夫でした。紙って思いのほか強いものなんですね。あまりの凄まじさにけっきょく朝まで眠れませんでしたが。

ところで私は15日に賀家湾に戻ったのですが、いきなり葬儀があったのです。一昨年12月に亡くなった賀登科老人の長男の成発さんです。71歳でした。一昨年は登科老人のビデオを撮ったのですが、それがひどく気に入られたようです。私の顔を見るや否や、グッドタイミングで帰ってきたとばかり、タバコやら酒やら無理やりおしつけられて、けっきょくビデオは無理だけど写真だけならと引き受けるハメに陥ってしまったのです。

成発さんには男女ひとりずつ子どもがいたのですが、息子の方は先に亡くなってしまい、娘ひとりなので葬儀は簡素なものでした。ところが今回も、もうビックリ仰天の顛末があったのです。

故人には連れ合いがふたりいて、先妻はすでに40年以上も前に亡くなっていました。それでまずはこの骨を掘り出すのですが、墓の位置もきちんとわかっていたし、もう土も凍っていなかったので、3時間ほどで掘り出すことができました。もちろんきれいな骸骨になっていました。すべての骨を拾い上げて長円形のザルに入れ、紅い紙をかけて新しく掘った墓の方に持って行きます。

午後になって、今度は2番目のオクさんの骨を掘り出さなければならないのですが、まだ埋葬されて4年目だということで、棺ごと掘り出して新しい墓に埋葬することになりました。まだ骸骨になってないからです。しかし、棺はかなり腐食が進んでおり、途中でボロリ、ボトンと木枠が崩れ落ちて来て、もうほとんど中身が見えそうなくらいになって、なかなかスリリングな状況でした。しかも新しい墓からずいぶん遠いところに埋葬してあったのです。

写真のように、2人分の骨が新しい墓の横に並べられ、ここでちょっとした儀式をしたのち、右側の先妻さんの骨の方には“化粧”がほどこされます。骨の上にかけてあるのは、粟のカラです。風水先生と娘さん(正確には2番目の妻の子ども)とで、頭蓋骨を焼酎で拭き清めてから、小麦粉で作った目と鼻を付け(以前、耳を付けたのを見たこともあります)、目玉と鼻の穴もちゃんと付けます。テントの左側の紅い紙には、「出陽見陽慰霊」、右側には「旧宅翻新安遺」、上には「合暦大吉」と書いてあります。

で、棺の方はどうしたかというと、まず棺ごと墓室に入れ、中で底面だけ残して解体して棺材を外に出します。墓室には風水先生と娘さんが入って何かやっているのですが、外からはまったく見えません。もう見たくて見たくて仕方がない私は、みな顔見知りであるのをいいことに、入ってもいいかと聞くと、「お前は怖くないのか?」と驚かれてしまい、つまり怖くなければ入っていいということと判断して中に潜り込みました。そして、じっくりと、つぶさに、その埋葬の手順を見せてもらったのです。

それがもう、凄まじい光景だったのです。遺体はまだミイラ状態でした。しかし、とにかく骸骨にしなければならないようで、風水先生が頭皮をはぎ、髪の毛をむしりとり、閉じた口を金槌でガンガンたたいて歯を折り、すべての歯を抜き取ってしまうのです。あまり微細に書くと気分を悪くされる人もいるでしょうから、これ以上は書きませんが、先妻さんと同じように、小麦粉で目と鼻を付け、口の中にはまんとうを1個詰め込みました。最後には身体に紅い布をかけて、今日の手順はすべて終了したようです。夫の遺体が埋葬されるのは明日早朝です。

で、ビックリ仰天は、もうひとつあるのです。墓室は3畳間を少し切るくらいの広さがあり(普通はもう少し狭い)、私はさすがに入り口に近い位置でしゃがみこんで見ていました。いうまでもなく写真は遠慮しました。それで、最初に私が外に出ると、風水先生が中から呼び止めたのです。何をいっているのかさっぱり聞き取れないので、外にいる人に通訳してもらうと、なんと、「記念写真を撮ってくれ」といっているというのです。

一瞬目が点になりました。娘さんも、「あなたがイヤでなければ撮ってほしい」というのです。(この地の)中国人の写真好きもここに極まれり、です。そして、翌朝、成発さんの遺体が墓室に収められてから、またまた目を見張る儀式が執り行われたのですが、これはもう長くなるので省きます。写真も、無制限に公開する類のものではないので、ここにはアップしません。かわりに、主役の幼い子どもたちの写真です。ということで、何か最後がまとまりませんが、そうそう、この人が風水先生です。


(3月23日)