余波

(*しばらくネットが繋がりませんでした)

私が今いる「麒麟農家楽」というのは、もともとは民宿だったのですが、今回は様子が変わっていました。赤いトレーナーを着たたくさんの若い人たちが借り切っていて、庭に停まっているのは、北京ナンバーと山西ナンバーのPRADOとISUZUの軽トラックです。そして、PRADOの右側に小さな赤い炎が写っているのが見えると思いますが、天然ガスの炎です。つまり天然ガス採掘のために北京や太原などから来ている中国石油の社員、作業員の宿泊施設となっていたのです。

この櫓は一昨年来たときには見ました。ところが昨年来たときは撤去されていたので、もうガスは出ないのかと思っていたら、再び今度は2本の櫓が建てられていました。社員も30人来ているということで、3交代制で24時間掘っているということでしょう。一晩中モーターの唸り声が止むことはありません。「中国石油」といえば、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの会社で、重慶の近くで世界最大規模のガス田を発見したとかいうニュースをネットで見たことがあります。

写真のように、ここは小さな規模ですが、それでも臨県に12ヵ所ほどの採掘現場があるそうです。バスに乗っていると、ときどき石油を掘っている、例の巨大バッタみたいな機械を見ることもあります。石炭、石油、天然ガスと、なんだかどこでも掘れば何らかの資源が出てくるみたいで、“発展中国”の勢いはまだまだ留まるところを知らないようです。

しかし、ここだって以前は河南坪(写真中央を左右に流れるのが黄河。右手から黄河流入するのが湫水河。湫水河の手前が河南坪で、対岸が磧口。ちなみに、右下から黄河に向かう舗装道路は、最近できた道路で、陝西省に渡るウーブーという町まで繋がり、交通量のある道路です。ナンマツ君がはねられたのはここで、自力で下の櫓のあたりまで下りてきていました)の一農民の畑だったわけだし、その利権はいったいどうなっているのでしょう?補償金をもらったなんていう話も聞いたことがありません。

そういえばしばらく前の話ですが、磧口と賀家湾の中間くらいにある白家マオという村で、利権がらみの殺人事件が起こりました。この村では、清朝の頃からあった小さな炭鉱を村人が自主管理していたのですが、それを臨県の役人が無断で民間に売り渡してしまい、裁判沙汰になっていたのです。裁判では村の所有権を認めたために、この炭鉱から勝手に石炭を掘られないように、村人が交代で見張りをしていたようで、その見張り小屋を、新しい炭鉱主に雇われたヤクザ者の集団が襲って、4人の村人が殺されたのです。まるで黒澤明の世界そのままのような話ですが、つい最近村の入り口(離石行きの幹線道路に面している)の前を通ったときには、ゲートが作られていて、村人が通行車両を一台ずつ検問しているようでした。もしかしたら、屈強な“用心棒”も雇われているのかもしれません。

私が普段接しているビンボーでかつ無欲なじいちゃんばあちゃんたちとは無縁だと思っていた、世界発の経済や利権の大波小波は、どうやらこんな僻村にまでも及んで来ているようです。

今日のなつめ。

(12月9日)