豆殻

まだまだ私の冬支度は続きます。
食糧をいくら備蓄しようと、−20℃になるこの地で一番肝心なのは、どうやって暖房するかに尽きます。去年は800ワットの首振り電気ストーブで乗り切ったのですが(最も一番寒い時期1ヵ月は帰国していました)、時に室温3℃という条件の中ですっかり身体を壊してしまいました。幸か不幸か、私はとても我慢強い性格らしく、世の“艱難辛苦”にじっとひとりで耐えてしまうところがあるのです。「いい加減に歳というものを考えなさい」と言われ出してからすでに20年、最近になってようやくそのアドバイスの意味がわかるようになりました。

で、きのう買ったのです。ストーブを。この4年半というもの、「いつまでここにいるかわからないから」「いつまた引越すかわからないから」と、大きな荷物はなるべく買わないようにしていました。しかし、引っ越したらまた買えばいいのです。この写真のストーブは、下の招賢から運んでもらって、設置もしてもらって140元でした。

石炭は、村で小売をしている家があったので、そこからとりあえず200キロ運んでもらいました。1キロ6毛で、120元。1ヵ月に100キロくらいは使うので、やはり石炭は高いです。この写真で150キロほど、石炭はとても重いのです。

ところで、石炭に点火するというのはちょっとした技術がいるのですが、私は樊家山にいたときにはカマドに火を入れていたのでなんとかできます。まずは新聞紙の類が必要ですが、村にはそんなものはないので、だいたいは乾燥したトウモロコシの皮や枯れ草、また豆殻を使います。しかしこれらは火力が小さくすぐに燃え尽きてしまうので、その上に柴、つまり木を入れて、それが勢いよく燃え出したところで石炭を入れます。多すぎても少なすぎてもいけません。

村人たちは、いったん火を入れたら滅多に種火を絶やすことはないので、これらのものがほとんどいらないのですが(石炭が買えない人は別)、私のストーブは翌朝には消えてしまうので、毎朝火を起こさなければなりません。それでいまはどこの家にも山ほど積んである、豆殻をもらうことにしました。

豆殻といっても、なんだかわからない人も多いと思います。上の写真は先月の28日に撮ったもので、今はすでにこういった作業は終わっていますが、収穫した豆を庭に広げて乾燥させ、それをルオガーという道具を使って豆を叩き落すのです。なかには、バイクで豆の上をぐるぐる廻って落としている家もありました。その残った殻が豆殻ですが、根っこから引き抜いて収穫するため、かなりの量になり、大昔から貴重な燃料でした。

私はそれをせっせと運びました。最初はビニール紐で縛って引きずっていたのですが、村人が天秤棒で担いだほうが効率的だといって貸してくれました。ところが豆殻は軽いのに、このカゴも棒もとても重くて、ヨロヨロ運んでいたら、見かねてじいちゃんが手伝ってくれました。この殻だけでも湯が沸かせるし、なんか三国志の世界みたいでいいなぁと心惹かれて、けっきょく納屋にいっぱいになるほど運び込んだのです。

これだけ大量にあれば、柴はなくても、直接石炭を入れても大丈夫だと思います。これでようやく冬支度は一段落したわけです。なつめはさっそく豆殻の山に登り、自分のスペースを確保してそこから動かなくなりました。よほど気に入ったようです。(つづく)

(11月8日)