崩落!

ゆうべ11時半頃、ドドーッ!とものすごい音響と共に、后ヤオの壁の一部が崩落しました。なつめがビックリして飛び出てきましたが、来たときから少し剥れていたし、数日前からパラパラと土が落ちる前兆音がしていたので、私はそのうちに崩れるだろうなと思っていました。しかし、そこまでは予測していたのですが、その後1分もたたないうちにものすごい土ぼこりがもわもわもわーっと、こちらまで進入してきて、これは予想外でした。もうとても部屋の中にはおれず、庭に出て30分ほどほこりがおさまるのを待ちました。ちょうど満月の夜で、外は煌々と明るく、氷点下の風が私の全身を刺し貫き、さすがに情けなくなって泣きそうになりました。なつめは寒いので出てきませんでした。

今度のヤオトンは、前より間口も一回り大きく、奥行きも1.5倍くらいあります。そして奥から1/3くらいのところに箪笥が置いてあって、カーテンで仕切ってあります。その奥のことを「后ヤオ」といって、普通は、甕に入れた粟や大豆など、食糧の備蓄倉庫になっている家が多いのですが、この家は完全に“ゴミ溜め”になっていました。

それをなんとか片づけて、スペースを空け、なつめの部屋としたのですが、それはなぜかというと、ネズミです。彼らがおとなしく地面の上だけを這っていてくれれば私は共存可能なのですが、なにしろ土間にはじゃがいも、さつまいも、にんじん、かぼちゃ等々(すべてもらいもの)が、ところかまわず広げてあるので、なつめに番をしてもらうことにしたのです。なつめはいたくこの部屋が気に入ったようで、放っておくと、昼間でもずっとここで寝ています。もちろん、ネズミは出てこなくなりました。

で、今日になってからその崩落した跡をよく見てみたら、それは単なる壁ではなく、空洞になっていたのです(フラッシュが反射してちょっとわかりづらいですが)。つまり、隠し小部屋になっていて、昔の人はここに大切なものを隠し、その上に壁土を塗りこめたのです。

私が取材した老人達の何人かが話していましたが、日本軍は棒で壁をたたいて音が違うところを見つけると壁を壊して中のものを持ち去ったそうです。壁の中に食糧や衣料など隠すわけはなく、それは間違いなく銀貨、およびそれに準ずる財産だったことでしょう。思いもかけないところで、老人達の話がリアリティを持って迫ってきました。

しかししかし、今私にとってもっとも切実な問題は、上の写真です。この亀裂は、ちょうど私が寝ているカンの真上にあるのですが、これが崩落すれば私の顔を直撃します。これまではあまり気にしていなかったのですが、これは何とか“専門家”にお伺いを立てたほうがよさそうです。それでもし危険であるならば、またまた新しいところを探さざるを得ません。この1ヶ月間というもの、“蜘蛛の巣城の戦い”を孤軍奮闘、ようやく勝利を治めたところなのに‥‥あぁ涙、涙、涙です。

(11月4日)