オイルサーディンのように

久しぶりに雨があがって薄日がさしてきたので、それっ!とばかり部屋の掃除にとりかかりました。

「乱七八糟」というのは、「部屋の中にめちゃくちゃ荷物が広がってるので入らないで」とか「頭の中がめちゃめちゃ混乱していて何もわからない」というふうに、日常会話の中でよく使われる言葉です。で、ばあちゃんの部屋がどれくらい乱七八糟かというと、↑これくらい、というのはウソで、これはとなりの部屋。私が越すのは↓の部屋です。でも、これは3日間くらい掃除しまくった結果で、最初は↑とあまり変わりませんでした。

最初に息子の家を訪ねたとき、彼は留守でしたが、今日ちょうど出稼ぎから戻ってきていて、家にいました。改めて部屋を借りたい旨を伝えると、それはいいんだけど、実は冬の一番寒いときには、ばあちゃんは元の部屋にもどって暮らす予定だというのです。つまり、いま彼らが住んでいる家は、平房(ピンファン)といって、ヤオトンではなく、平地に基礎から立ち上げた四角い平屋建ての建物です。去年完成したばかりで、床には白いタイルが敷き詰められ、大きな窓がとってあり、台所も洗面所もあって、広々としてきれいな部屋です。ところが、冬の寒さは、いくらストーブを焚いても、年寄りには我慢できないだろう、というのです。

つまりヤオトンというのは、それくらい暖かいのです。村人は10月に入る頃から、部屋の中のカマドで煮炊きをするようになり、そして11月ともなれば、カマドに火を入れて、老人たちのように家を空けることがない人たちは、それからずーーーっと、春節が過ぎるまで火を絶やすことはないのです。そして、壁も床も天井も、すべて土でできているわけですから、じっくり時間をかけて暖められた部屋は常に一定の温度を保ち、暑過ぎるようなことも決してなく、人間の肌にちょうどいい快適さを常に提供してくれるのです。

で、農暦の11月になったら、ばあちゃんと、世話をする娘がひとりやってくるけど、どうしよう?というのです。今さらどうしようといわれても私も困るし、ちょうどその頃には私はビザ切れで日本に帰っているし、何だったら3人で暮らしてもかまわないということで、了解を得ることができました。このばあちゃんとは前々から、言葉は通じないけどしょっちゅう顔を合わせている仲だし、短い期間なら彼女らと一緒に暮らすのもおもしろいかもしれません。こちらでは、ひとつのカンの上で3人4人が枕を並べて、まさにオイルサーディンの缶詰のように暮らす、というのはぜんぜん珍しいことではないのです。黄土高原に来て4年ちょっと。ずーーーっとひとりで暮らしてきたので、それもいいかもしれません。

(9月9日)