知らぬが仏

15日にまるで日本の梅雨明けのような激しい雷雨がありました。目の前の庭に一瞬にして川が流れ、濁流が音をたてたのです(ちょっとオーバーか?)。庭はちょうどバドミントンコートがとれるくらいの広さなのですが、井戸の近くにカメが埋め込んであって、そこにすべての雨水が流れ込むようにやや傾斜がとってあります。ほんの2,3時間の雨だったのですが、それまでのショボショボ雨とは比べ物にならない圧倒的な水量となり、これでヤレヤレと私も胸をなで下ろしました。

ところが翌日水を汲み上げてみると、桶の水はまっ黄色で、ほとんど泥水に近い状態だったのです。いったいなぜ?と大家さんに聞くと、きのう雨が降ったからでしょ、と、なんでそんなこと聞くの?といった怪訝な顔をされてしまいました。そこでようやく、私がこれまで知らなかった恐ろしい事実が明らかになったのです。

井戸から5メートルくらいのところにカメが埋め込んであるのは知っていました。庭に井戸が掘ってある家ではどこも同じです。しかし私は、その穴から流れ込んだ水はいったんは地下に浸透して、そこから徐々に井戸に流れ込む構造になっているとばかり思っていました。ところが大家さんがいうには、その集水口から井戸まで、地下にパイプが埋め込んであって、雨水は直接井戸に流れ込むようになっているのだそうです。だからきのう降った雨はすでに井戸水となっていて、それを私は汲み上げたわけです。

“郷に入っては郷に従え”という言葉を待つまでもなく、私の環境適応能力はきわめて高いのですが、さすがにこれには絶句しました。なぜならこの庭で、客人が痰や唾を吐いたり、なつめはしないけれど、以前いた大家さんの犬は、おしっこもうんこもしてたし、これからは山羊の糞尿も垂れ流される可能性が強いわけです。それらを一気に雨水が押し流し、まるで大腸菌のため池から井戸に放流されるかの如く流れ込み、私はこれまでその水を使っていたし、これからも使わざるを得ないのです。飲料にはもちろんいったん煮沸していましたが、歯磨きやきゅうりもみなんか作るときは、そのまま使っていました。

“知らぬが仏”とはよくいったもので、これまではすべからくOK!でした。でも、知ってしまった以上、ここんとこ体調がずっと悪いのは水のせいかしら?などと疑心暗鬼にもなってしまうのです。1,2週間もすれば、とりあえず泥は沈殿して水はきれいになるでしょう。しかしこの先夏に向かって、大腸菌の繁殖はますます旺盛を極めることでしょう。遠い昔、学校のプールに大量にぶち込まれていた、あのツーンと鼻を突くカルキの臭いが懐かしく思い出されました。

で、話は飛ぶのですが、日本ではパンデミック(今年の流行語大賞決定?)に突入しそうな豚インフル。疫学的にはさまざまな理由があるのでしょうが、日本人、特に若い世代は免疫力が劣化してきているのではないでしょうか?他国の状況と比べて尋常でないような気がします。

(5月18日)