2009年 明けまして

(おめでとうございます)

私はいま日本です。いよいよ出版が決まって、出版社と具体的な打ち合わせのために帰国しました。

年越しには、そばもなくおせちもなく酒もなく、ただ人からもらった餅だけがあったので一気に6つも食べたら気持ちが悪くなって、横になっていました。それでも年が明けたころには回復して、歩いて5分のところにある神社に行ってみました。ここはほんの小さな神社ですが、渡来人が建立(神社は建立とはいわない?)したという由緒ある古い神社で、毎年5月には、山の中なのに「御船祭り」が開催されるところです。各町内で保存している、船形の立派な山車を若い衆が曳いて神社に奉納するのですが、全国的にはほとんど知られていない、“穴場”的なとても勇壮なお祭りです。私は3年ほど前に見たことがあります。

午前0時半頃に行ったのですが、10人くらいの参拝者がいました。そこで私がびっくりしたのは、本殿のすぐ近くで焚かれていた焚き火です。燃やされていたのは、すべて天然の木だったのです。しかも、樹齢何十年という、直径が30cm以上もあるような大木の輪切りが、どんっ!どんっ!と無造作に積み上げられ、火が小さくなると、これまた惜しげもなくどかん!どかん!と近所のじいさんたちがふたりがかりで足してゆくのです。もちろん枯木だとは思いますが、それにしても、いまどきあんな贅沢な焚き火ができるなんて、お正月のせいなのか、この界隈にはあり余っているのかは、聞きそこねました。

そこでひとりぼんやり焚き火にあたっていたら、社務所のおじさんがお神酒と小さなみかんをひとつくれました。みかんは向こうでも売っていて(南の方から来るもの)、私は市に行くたびに買って帰りますが、久しぶりに食べた日本のみかんは、皮が薄くて、中の房の皮も柔らかくて、実はほんとうに甘くて、あぁ日本のみかんはおいしいなぁ、としみじみ日本の味をかみしめました。

3,4日過ぎたら、私は東京の某所に籠って、原稿の整理をしなければなりません。なぜ“籠る”のかというと、日本のこの快適な環境に1週間も身を置いていると、心はともかく、身体の方がじきになじんでしまって、あの“ビンボー”な黄土高原の村のことなど何も書けなくなってしまうからです。もともと器用な人間ではないので、切り替えスイッチがぜんぜん働かなくなるのです。もうほとんどインフルエンザ予防に近いものがあります。

それで、春節(今年は1月26日)までには賀家湾に戻ります。出版予定は4月頃です。また具体的なことが決まりましたらお知らせしますので、みなさんどうかよろしくお願いします。

写真;お稲荷さんでもないのに、真っ赤な鳥居って初めて見ました。これは近所の神社とは別の神社です。で、その神社のすぐ前の道路を、赤信号で白鷺がのんびり横断していました。1月1日に見るなんて、もしかして“瑞鳥?”かしら。これらの写真で、私がいまどのあたりにいるか?おわかりになりますよね。
冒頭( )に入れたのは、国内でも国外でも、“おめでたくない”人々がたくさんいるからです。