ベテランの技

賀家湾では収穫の秋まっさかりです。残念ながら商品作物の棗は2年続きで壊滅状態でしたが、その他の作物は夏場の高温多雨状態で、まずは豊作でした。村人たちは朝早くから日が暮れるまで、大きな荷物を担いで山道を上り下りしています。木のつるで編んだ籠を天秤棒にふたつぶら下げて、片方に20キロくらいのじゃがいもやとうもろこしを担ぐのですが、その天秤棒のぎゅんぎゅんしなっている様子もまた豊かさの表れです。70を過ぎたような老人たちでも、1本のロープとタオルくらいの1枚の布だけで、30キロくらいはたくみに担ぎ上げるのです。ベテランの技です。

村で最も作付けされているのは、主食の粟と、これまた主食といってもいいじゃがいも、飼料用のとうもろこし、そして大豆などの豆類です。他には、油を採る麻、さつまいも、かぼちゃ、綿、黍、にんじん、唐辛子、葱などが作られています。20年くらい前までは小麦も作っていたのですが、生産量が少なく、政府に税として納めるだけでせいいっぱいで、自分たちは口にできなかったそうです。現在、小麦粉はみな現金で購入しています。

じゃがいもの収穫は終わり、今は粟と豆の収穫期です。粟の穂は稲の穂よりもずっと大きく、ずっしりと重く、びっちりと実がついているので、穂先だけを鎌やナイフでこそげるように刈り取っていきます。これを庭に広げて乾燥させ、碾子(ニィエンズ)というふたり掛りで挽く大きな石臼で挽いて実を落とします。殻も一緒に混ざっているので、これを箕に入れて高い位置からザザァーッと何回も落として、風で殻が飛ばされて実だけが残るようにするのですが、これがなかなか難しく、これまたベテランの技術を要する農作業です。だいたいがばあちゃんたちの仕事のようです。

ちなみに中国語では、日本で食べているような「米」のことを「大米」(ダーミィ)といい、「粟」のことを「小米」(シャオミィ)といいます。こちらの方言で「米」というと、「粟」のことです。そしてこの小米に野菜を少しまぜた「小米湯」スープが、夕食時に最も一般的に出る食事で、小学校の給食も、夜はこの小米湯とマントウが定番です。

(10月24日)