娶媳婦(チーシーフゥ)

20日は朝から小雨が降り続くあいにくの天気でしたが、賀家湾でふたつの結婚式がありました。結婚式といっても、こちらでははっきりと別れていて、娘を嫁に出す場合は「出嫁」(チュージャー)といい、嫁を迎える場合を「娶媳婦」といいます。当然後者の方が派手な儀式になります。

その「娶媳婦」が同時にすぐ近所の2軒の家でありました。午前中はかなりの雨脚でしたが、馬の鈴の音がしゃらんしゃらん聞こえてきたので、やはり馬でお嫁さんを迎えに行ったようです。ここらあたりは山地なので馬、磧口のような平地の場合は「抬花轎」といって花飾りのついた輿(張芸謀の『紅いコーリャン』に出てくるアレです)を使いますが、最近はどんどん“近代化”が進み、ワーゲンやホンダの乗用車が使われることが多くなりました。そういえばちょっと前に、三菱パジェロに紅いリボンをかけてさっそうと出かける若い人たちを見ましたが、親会社の前身を知ってか知らずか「いやぁやっぱり日本車はいいねぇ」と嬉々としてました。せっかくのお祝い事に水をさしてもと思い、私は黙ってましたが。

で、この日は雨の上に一日中停電という、因果な日和でしたが、午後2時くらいに一時の止み間があって、そのときに両家ともが一斉に外に繰り出して、お嫁さんのお披露目をしたのです。2組の楽隊がどんちゃかぶんちゃか奏でるので、部屋で寝ているわけにもいかず、私もカメラを持って坂を上ってみました。村人たちは、やはりどんなお嫁さんがこの村の新入りとしてやってくるのか、興味は尽きないようです。

「娶媳婦」はもう明らかに“嫁取り婚”で、新婦によりそって先導するのは新郎ではなく、彼の両親です。その他親戚一同が扇子を持って踊りながら村を一周しますが、新婦の両親や兄弟などはいっさい姿を現すことはありません。こちらはこちらで、午前中に新婦の実家では「出嫁」の儀式があり、新郎が村に到着するのを待って、村人に食事が振舞われるのです。その後に新婦は、(場合によっては)馬に乗って新郎の家まで行き、いろいろ儀式があった上に、ウェディングドレスで扇子持って衆目に晒されながら踊らなければならないので、これはもうぐったりとお疲れだと思います。もうほとんど、いやいや、憮然とした表情で踊っているお嫁さんの姿を、この間何回も見ました。

(10月22日)
写真;上は新郎のお父さん。真ん中、左側が新郎のお母さん。下、中央で憮然としているのがお嫁さん。