北京駅界隈で

昨夜10時半に無事北京に到着し、北京駅前のYHに落ち着きました。前もってあれこれ予約を入れておいたおかげで、今回はけっきょく、予想したよりスムーズな旅でした。そもそも他人のウワサとはあてにならないもので、地下鉄は全線走っていましたし、これまでも停まったことはなくて、ただ北京駅だけが工事中で使えないようです。

私がひそかに予想していた“戒厳令下”らしき風景は、北京駅界隈の様子を見る限りはやや拍子抜けの感がありました。ただ、なぜか人が少ないのです。いつもなら真夜中でもロータリーにたくさんの農民工や若者たちがゴロゴロ横になって、翌朝の出発待ちをしているのですが、彼らの姿がぜんぜん見あたりません。きっと規制されてるのでしょう。いつもよりずっと静かな駅前風景でした。

私は昼から何も食べていなかったので、開いてる食堂がないかと真夜中にウロウロしたのですが、目についたのはやっぱり警察でした。しかも、黒い戦闘服と皮の編み上げ靴に身を固めた「武警」が、ところどころにライフル銃を胸に構えて立っているのです。もちろんこれまでに見たことはありません。彼らは普通の警官とはまずガタイが違っているし、目つきもぜんぜん違っていて、何かを話しかけるという雰囲気ではありませんでした。写真を撮ろうかと思ったのですが、フラッシュを焚くと発砲されそうな目つきをしていたので止めておきました。

もうひとつ、私をひきつけて止まないものの姿を発見したのですが、それは2匹の警察犬です。1匹は中型の一見雑種のような白黒の短毛ぶち犬でしたが、もう1匹の方は、実に堂々と美しい大型のシェパード犬で、もしかしたら何百万円もする、きっと特殊な訓練を受けていた犬(爆発物探査犬?)だったのでしょう。紐に繋がれてはいましたが、そのひたひたと地を這う姿が、とてもこの世の犬とは思えない高貴なる獣のオーラに包まれていて、これに比べたらウチのかわいいなつめもほんとに駄犬だなぁと思ってしまいました。私はふらふらとその犬の歩みに惹かれて着いていってしまったのですが、何しろ0時を回っていることですし、あまり深追いをするといきなり攻撃されるやもしれないので、これも止めておきました。

けっきょく開いている店がなかったのでカップめんを買って帰り、部屋に戻って湯を入れたのまでは覚えているのですが、その後、酒も飲んでいないのにバタンキューで、今朝目が覚めたら、カップから汁がにじみ出ていて部屋中がたまらなくラーメン臭く、あぁ疲れていたんだなぁと、あらためてこの半年間にしみじみ思いを巡らせ、それにしてもなんて北京は蒸し暑いのだろう、賀家湾ならこんな不愉快な感じはないのにと、“故郷”を懐かしんでいる私です。

今日は、これから人と会うために北京大学に向かいます。これまでは一般人も自由に出入りできたのですが、今は許可証がないと入れないそうで、外の肯徳基で会います。明日は天津に行く用事があり、夕方には天安門にでも行ってみようかと考えています。また何か“珍しい”“ショッキングな”光景にでも出会ったらお知らせします。


(7月28日)
写真:翌朝の北京駅正面入り口。下は天安門広場。広場に入る地下道入り口で荷物検査されました。天気が悪くて、というかスモッグで、向こう側がかすんでいました。