この1週間はつらい日々でした。

この1週間はほんとうにつらい1週間でした(一部継続中)。まず、暑いのです、とにかく。連日の40度を超える猛暑に、さしもの洞窟建築も部屋中が温まってしまい、前に書いたほど快適ではなくなりました。カーテンを閉め切っておいても熱気がじわじわと進入してくるのが肌で感じられます。それでも夜寝苦しいということはありません。気温的には。

賀家湾でもボロの3本指に入るというこのヤオトンは、くまなく土でできているので、もう天然の洞窟、あるいは“ファーブルの館”みたいなもんで、虫がすごいのです。扉ももちろんぴったりとは閉まらず、昼夜を問わず小さな昆虫が自由に出入りして、私の疲れ果てた身体から生き血を吸っていきます。それで痒いのであちこち掻きむしり、皮膚もアレルギー気味の私の右腕はほぼ全体湿疹状態になって、それでも掻いて血と体液が流れ、ボコボコになってとても悲惨な状態なのです。大家さんは蚊帳を吊って寝ているのですが、この界隈では入手することができません。

でも、痛いよりは痒いほうがましかも、と自ら慰めていたら、夕べはサソリに左手の指の関節を刺され、これがまた七転八倒の苦しみなのです。これもどこにでも侵入してくるので防御のしようがありません。電気調理器の下に潜んでいました。

PCの方は使い方のコツがわかってきて、スタンバイ状態にして満タンにし、電源を切って使って、電池切れになるとまたスタンバイにして充電するのですが、もうバッテリーが老朽化しているので、30分くらいしかもちません。そして、一番の問題は、そもそも充電するための電力があるかないかということです。きのうは朝起きてからずーっと停電で、夜の9時頃にようやくやって来ました。せめていつからいつまで停電するとわかっていれば、お茶の1杯も飲めるのですが、折悪しく大家さんが1日外出していて(彼女の燃料はマキ)、近所までもらい湯に行く元気もなく、動けば汗になるので、ずっとカンの上で死んだように横になっていました。山西省の全工場がストップしたと聞いたので、内心やれやれと思っていたのですが、いったい電力はどこへ行っているのでしょう?

水も切れていて3日間顔を洗っていません。これも大家さんに頼まなければならないので気が引けます。庭の大きな甕に雨水を貯めているのですが、そこには大量のぼうふらが発生していて、それを狙っていろんな虫もやってくるので、せっかくの水ですが、顔を洗う気にもなれず、なつめに飲ませるのすらはばかられます。

で、今朝方6時頃に大家さんが帰って来たのですが、門をあけたまままた出かけたのです。それでなんだかなつめの様子が変なので起き上がって外を見ると、もうあっというまにドッキングされてしまっていたのです。あぁ、いったいこの2週間、私はなんのために群がるオスたちからなつめを守ったのでしょう?まだ1年にならないし、妊娠すると私がいない間に出産するので、大家さんにも迷惑がかかり、今回はどうしても避けたかったのです。夜中に切ない声をたてるなつめを抱いて、月のない夜、庭中をぐるぐる何度もめぐりめぐったものでした。しかもお相手は、日ごろから私の大嫌いな、茶色の下卑た目つき(!!)をした白黒の汚いブチ犬だったのです。「本能だからこれだけは仕方ないわねぇ」とひとこといわれておしまいでしたが、私は情けなくて泣きそうになりました。

そして先ほど、小学校が夏休みに入り、イーハーが実家へ帰って行きました。いよいよ最後のツメで、帰国までに聞き取りを予定していた村や人がいたのですが、「弟の勉強のめんどうをみなければならない」からといわれて、私はあきらめました。いえ、それでも頼み込めば行ってくれたかもしれませんが、もうそんなことをいう元気は私にはありませんでした。彼はもうこの村には帰ってきません。都会に出て新しい仕事を探すのだそうです。

いいこともあれば悪いこともあります。こんだけ情けないことが続いたんだから、きっとまたいいことも続くでしょう。さきほど薬箱からステロイド軟膏をみつけたので、これでなんとか凌げるかもしれません。今日は珍しく朝からずっと電気もあります。午後には離石で働いている息子が帰ってきて、私の水がめも一杯にしてくれました。そうそう、つい最近ですが、賀家湾で無線ネットカードが使えるようになりました。そして、ちょうどこれを書いているいま、賀銀旭じいちゃんがおおきなカボチャを持ってきてくれました。彼はいま一人暮らしなので、食べきれない農作物をいつもたくさんくれる人です。なつめは朝の出来事などそ知らぬ顔で、はじめて見るかぼちゃと遊びたそうでした。秋にまたこの地に戻ったとき、産まれたばかりのかわいい子犬が、庭中にウジャウジャいるのも悪くないかもしれません。

(7月11日)