貼り紙

村長さんと村の書記がやって来て、木の幹に何やら貼り紙をしているのでのぞいてみると、非法な爆発物等の発見通報者に奨励金を出すという内容のものでした。こういった貼り紙は前にも見たことがありますが、いよいよオリンピックも近づき、改めて摘発に乗り出したということでしょうか。

いったい全中国で年間どれくらいの爆発物が使用されているかというと、それはもうとんでもない量になると思います。人民解放軍が使用する分はいうに及ばず、鉱山関係でも大量に使用されるでしょうが、それと並んで、実は民間で使用される量がものすごく多いのです。爆竹と花火です。

春節のときに夜通しで爆竹を鳴らす光景はつとに有名ですが、春節だけでなく、爆竹や花火を鳴らすのは、とりわけ農村地区(都市部では禁止されている地域が多い)では絶対に欠くことのできない長く続いた伝統で、それは今も生活の中にしっかり根付いているのです。

まず、どこかの家で赤ちゃんが産まれたとすると、それを祝って花火が打ち上げられます。村人は「あぁ産まれたな」とわかるわけです。たいていは、10本から20本くらいの筒型のものをひとまとめに縛ってあるものを使います。子供が満12歳の誕生日を迎えると、いわば“元服”のようなもので、友達や親戚を呼んでパーティーを開き(第1子のみ)、ここでももちろん景気よく花火が打ち上げられます。新規開店のホテルや商店でもあろうものなら、それはもう盛大豪華に、何百発もの花火や爆竹や、時には解放軍お下がりの砲筒まで出て(もちろん空砲)、バンバンッ!!バチバチバチ!!ドーンドーン!!と耳を劈く轟音で、道行く人はイヤでものぞきに行きたくなります。

結婚式、葬儀は主に爆竹が使われます。新婦が実家を出るとき、新郎の家に到着したときには、バンバン盛大に打ち鳴らされます。長い葬儀の中休みの後に次の儀式が始まるたびに爆竹や手持ちの空砲が鳴らされます。もちろん出棺のときにも埋葬のときにも、それぞれの儀式の始まりの合図に鳴らされます。年々の墓参りのおりにも必ず持参します。誰かが病気で入院していて、退院するときには、門のところでお祝いと感謝の印として鳴らします。春節などで町に出た子供たちが帰郷したとき、また再び家を出るときにも道中の安全を祈って鳴らします。そして、四川地震のニュースでおそらくごらんになったでしょうが、誰かが死んだときも、死者を悼んで爆竹が打ち鳴らされるのです。

ただし、爆竹や花火はけっこう高いので、ビンボーなこの界隈ではきわめてささやかに、ほんの一瞬バンバンッ!!と鳴り響く程度です。春節などで「お前んとこは、今年は儲けたから○○元も買うんだってなぁ」といった冗談交じりの会話がかわされるのですが、5年ほど前に行った福建省客家の村では、黄土高原地区の平均年収の何倍もの価格の爆竹が、朝まで盛大に鳴らし続けられました。

そうそう、貼り紙ですが、書いてあったのは:

「臨県公安局爆発物非法活動取締り奨励金制度について」

臨県公安局は、人びとの生活と財産を守るために、爆発物の非法生産、販売、購入、移送、備蓄および使用等を取り締まり、断固として爆発事故の防止に努めなければならない。よって、以下の違法活動に関して、通報者には奨励金を給付するものである。

非法火薬500Kg以下、または雷管500本以下      奨励金500元
非法火薬1000Kg以下、または雷管1000本以下    奨励金1000元
        ‥‥
        ‥‥
非法火薬5000Kg以上、または雷管3万本以上      奨励金3万元
非法生産拠点、非法販売ネットワーク            奨励金3−5万元

だいたいこんな内容です。しかし、火薬の量というのが、並大抵の量ではないと思いませんか?とまれ、賀家湾の村人たちは“我関せず焉”で、3日目には貼り紙も風に千切れたのか、きれいさっぱりありませんでした。

(6月3日)
写真:古木のまわりが老人たち(男性)の溜まり場。こちらでは、テーブルについて食事をするという習慣がありません。暑かろうが寒かろうが、みなどんぶりを持って外に出てきて、石の上に座ったり、立ったままおしゃべりをしながら食べます。おかずの皿があるということはなく、常にどんぶりひとつです。