ミクロンとの闘い

この辺りの村の名前はとてもわかりやすくて、「樊家山」というのは、樊という人が開いた山の上にある村、「高家溝」というのは、高という人が開いた谷筋の村、「林家坪」というのは、林という人が開いた平らになった土地、ということです。「湾」とつく名前は初めて見るのですが、おそらく、湾のような形に開けた土地ということでしょう。そんな形をしている村です。この村の90%は「賀」さんだそうですが、ただし、こちらでは結婚しても女性の姓は変らないので、当然いろいろな姓があるということです。

で、私が引っ越してきた高奶英の家は、ちょうど湾の一番奥まった位置にあるので、見晴らしはとてもいいのですが、昨日今日のように強風の日は、その風がもろに吹きつける場所に位置しています。風だけならいいのですが、一緒に巻き上がる砂埃がものすごいのです。黄砂というのは、砂というより、もっと細かいミクロンの粒子が舞い上がるので、扉を閉めておいても(そもそもぴったりとは閉まらない)、至るところから進入してきて、2,3時間で白く粉をふきます。その上に水がないので、例え全身砂まみれになって帰ってきても、黙ってそのまま寝るしかありません。しかもこの部屋は床が完全に土間になっていて、なつめが欲求不満になると次々と穿り返し、おまけにブルブルしたり、コリコリ掻いたりするので、鼻炎持ちの私はこれはなんとか対処法を考えねばなりません。

しかし慣れとはありがたいもので、ひっそりと降り積もった砂埃を、たたき起こせば、通風のきかない洞窟部屋にただ舞い上がらせるだけなので、なるべくそっとしておいて、私は部屋の中でマスクをすることにしました。今回こちらに戻るときに、友人が「トリインフルエンザ予防」用のマスクを持たせてくれたので、思いもかけぬところでとても役に立っているのです。

(そうそう、安徽省で流行している手足口病ですが、離石で患者が発生して、磧口にひとつだけある幼稚園はすでに閉鎖になっています。日本では滅多に死ぬことはないみたいですが、安徽ではかなりの死者が出ているようで、磧口のお母さん達はややパニック状態。例のSARSの時にみなが争って呑んだ、ナントカいう風邪薬(!?)が売り切れだそうです)

一番心配なのはパソコン。カメラやビデオはビニール袋に密封して保管していますが、パソコンは開かないわけにはいきません。すでに3年でHDDを交換して2年目に入っているのですが、少なくともあと1年は頑張って欲しいものです。

(5月11日)
写真:高い位置に登ると360度こんな風景が広がります。ちなみに、段々になっているのは人間が耕したのであって、自然の造形ではありません。これこそ“世界遺産”にふさわしい風景だと私はいつも思っています。下は私の部屋の窓ガラス越しに撮った朝の風景。左側が大家さん。

*四川地震復旧事業の関連ではないかと思うのですが、ずっと停電が続き(1日に2,3時間は来る)、下の招賢のネット屋も店を閉じてしまいました。私はこれまでは無線ネットカードというのを使っていて、それが招賢では通じなかったのですが、今、バイクで1時間くらい走って通じるところまで連れてきてもらって路上で繋いでいます。埃がすごいので、これで。下の“送り火”のことはまた書きます。