遅ればせの清明節

これまたずいぶん時がたってしまいましたが、今年の清明節は4月4日でした。町に出た子どもたちがこぞって村に帰り、先祖の墓参りをする日です。日頃静かな賀家湾村でもあちこちに乗用車が停まり、あるいはバスで帰郷し、普段は見ない若い人たちで賑わいました。

ところが、今年は当日が朝から小雨で、墓参りに行けなかった人が多かったのです。なぜわかるかというと、墓参りをした後に、その場で必ず爆竹を鳴らすのですが、今年はあまり聞こえなかったからです。

小雨だったのですが、前夜から降ったりやんだりで、山の畑はしっかりと水を含んでツルツルに滑り、だいたいが高い位置にある墓まで、とても登れるものではないのです。これは実際に経験してみないとわからないですが、砂よりも細かいシルトという物質なので、ピッケルか軽アイゼンでもない限り不可能です。ですから、足場のいいところは当日、悪いところは翌日翌々日に行った人が多かったようです。



これが本来の墓参りの“痕跡”です。白い紙を何枚か墓に置いて、土や小石で押さえます。ところが近年年ごとに派手になって、色彩豊かな造花や幟や飾り物が増えて、遠くからでもとても目立つようになりました。


お供えの仕方も日本とはずいぶん違っていて、見た目なんかではなく、とにかく“てんこ盛り”がいいのです。ミカンもリンゴもちょっとずつ皮を剥いて、ご先祖様が食べやすいように供えます。自家で作った、ダイコンやニンジンの煮物も定番です。



チビなつはもう、食べ放題、かけ放題で大ハシャギでしたが、帰ってからまた晩ご飯をたいらげました。犬生の中でも一番ハツラツと元気な時期なんでしょうね。


この墓にはもう誰も来ていません。おそらく100年以上経っている墓でしょう。こうして順々に黄色い大地へと静かに還ってゆくのです。


全体的に写真が黄色っぽいのは落日が近い時間だからです。晴天の日の落日は、黄色い大地を黄金色に染めあげます。そして、清明節が終わり、子どもや孫たちも町に戻り、いよいよ今年も農耕の季節が始まりました。