動物大量死事件の真相の詳細

もうかなり前のことになってしまいましたが、気になっていらっしゃる方も多いと思うので、動物大量死事件の真相についてお知らせします。



これが私のウチの真ん前の谷にある“羊小屋”です。ここは絶好の飼育場になっていて、外部からの進入口は一か所しかありません。

ここの羊が、私が村に戻る(3月12日)直前に、何頭か襲われて死んでしまい、怒った羊飼いが、死んだ羊の肉に農薬を仕込んで、ここに通じる路に撒いたのです。
それを食べた村人の飼い犬猫が20匹ほど死にました。どうやら、しばらく住み着いていた野犬集団に襲われて死んだ犬もいたようですが、野犬集団は今はどこかの村に移動しました。

これが1枚目の写真のちょうど裏側で、近くに人家もありません。この路に撒いたようです。


この話を聞いた当初から、私は「犯人(犬)はきっとあの犬だろう」と思っていました。私は村の犬たちのことはほぼ把握していて、羊を襲うような獰猛な犬は、この犬を除いて考えられないのです。先祖代々ずっと人間と一緒に放し飼いで暮らしてきているので、みんなほんとうに従順でおとなしく、それでも咬んだりして危険な犬は、やはり繋いで飼っています。村には3匹ほどいます。

この写真の犬も、普段はとてもよくなついている犬なのですが、突然野生に還る傾向があって、以前も子羊をかみ殺したことがあり、その時はしばらく繋がれていました。おととしドゥドゥという犬が、交尾中にかみ殺されたのですが、犯人はきっとこいつでしょう。本家なつめがいた頃も、私はこの犬には近づけないようにしていました。

もちろん本人(犬)に責任を問うことはできないのですが、以来ずっと今日までこの犬は繋がれているので、つまり飼い主も事の事情を理解しているということでしょう。キレて農薬を撒いた羊飼いもあまりに乱暴ですが、いくらこんな田舎でも、飼い主は、“前科”があるのだから自由に放し飼いにしてはいけないのです。そのうち幼い子どもでも咬んだら大事です。村には、町で働く息子たちの子ども、つまり就学前の孫たちを育てている年寄り家庭が少なくないのです。

あれからもう1か月もたっているわけで、もちろん現在は危険物はありません。犬たちも自由に出歩くようになりましたが、ぐっと数が減ってしまいました。いうまでもなく、クロの姿が見えなくなったのが、私には一番寂しいです。

その後の決着がどうなったかというのを、私もまだ聞けないでいるのですが、大人の羊で1頭が1000〜2000元しますから、羊飼いにとっては大変な損害です。羊飼いと犬の飼い主の間で何らかの交渉がなされたのかどうか、おそらくはないと思います。とばっちりを受けて死んだ犬たちの飼い主のところに、(犯人の飼い主が)謝罪に廻ったかというと、それはまた絶対にないと思います。繁殖のための犬でもないかぎり、こちらでは犬の命の値段はタダ同然です。そもそも日本や中国の都会のように、お金を出して“犬を買った”人はいません。欲しければいくらでも子犬は産まれます。

きのう、ビンボーじいさんの家を覗いてみたら、あれほどたくさんいた犬がほとんどいなくなっていました。どうしたの?と聞くと、みな死んでしまったというのです。こちらでは、産まれた子犬が1年以上の命をながらえるのは、決して簡単なことではありません。栄養失調とジステンパーです。この家でも一か所に固まって暮らしていたので、多分ジステンパーだと思います。1匹の犬が産まれて、生きて、死んでゆくという過程が、日本、および中国の海岸部などとは、まるで違うということがおわかりいただけるのではないかと思います。